3月19日に開幕予定のセンバツ甲子園大会の出場校32校が発表された。明治神宮大会の優勝校は自動的にセンバツ出場となるが、昨秋は新型コロナウイルスの影響で中止となった。その「神宮枠」をどうするのかが難題だったが、日本高野連はセンバツの代名詞ともなった“21世紀枠”を4校に増やして、その枠を埋めた。とはいえ、その出場権をかけた地方大会では、まったく別の問題が指摘された。投手の投球数制限だ。
「東北地区の代表校が発表された後でした。選考理由の一部が説明されたのですが、苦言とも取れる内容もありました」(アマチュア野球担当記者)
東北地区の代表校は、仙台育英、柴田の2校。昨秋東北大会の優勝校と準優勝校だ。
公立校の柴田は「野球有名校」ではない。東北地区でも私立校が上位進出を果たしているが、柴田は準決勝で日大山形に快勝した。柴田の実力はそこで証明されたが、大会前に「日大山形、花巻東が優勢」の声が聞かれた理由は、投球数制限のルールのためだ。
「決勝戦でエース投手が先発できなかったんです。先発マウンドに立ったのは本来は捕手という選手で、初登板でした」(地元紙記者)
エースは先発投手が4回に7点を失った後に登板した。「1週間500球」の投球制限により、「残り19球」しか投げられない。仙台育英打線の勢いを止めることができず、そのまま、投球制限に達すると一年生投手にマウンドに譲り、試合は「1対18」のワンサイドゲームになってしまった。
この投球制限が投手起用に影響したことを指して、1月29日に行われた選考委員会では、「東北は1週間で全試合を消化する日程でした。他地区の多くはほぼ1週間ごと。公平性に欠けるのではないかという意見がある」と、委員の一人が発言したのだ。
「その委員は関西地区の担当です。代表校を決める選考委員会をまとめる立場にもあるので、あえて問題提起をしたのでしょう」(前出・野球担当記者)
登板過多を防ぐため、「1週間500球」という目安が設けられたのは、昨年1月。雨天などによって日程が変更されたら、「選手層が薄い公立校は不利になる」という声はその当時から囁かれていた。案の定というべきか、東北地区の秋季大会で、公立校・柴田は戦う前から大きなハンディを背負ってしまったわけだ。
センバツは「投手力の強い学校が優勢」と言われる。対外試合数が少ないため、打撃面の調整不足も影響している。天候次第ではセンバツでも「500球制限」が大きく影響してきそうだ。
(スポーツライター・飯山満)