「アップルが電気自動運転車を作る」
長いことその噂がまことしやかに語られてきた計画が近く日の目を見るかもしれない。
イギリスに本社を置くニュース通信社のロイターは12月21日、アップルが自動運転技術の開発を進め、2024年に乗用車生産の開始を目指していると報じた。記事によれば、アップルは2014年に社内でプロジェクトをスタート。とくに力を入れているのが、電気自動車(EV)に搭載する車載電池の開発で、大幅なコストダウンと航続距離の向上が見込めるという。ただ、車両の組み立ては外部に委託して、自動車メーカーに自動運転システムを提供するに止めることや、さらにまた、コロナの影響もあって2024年には間に合わず、2025年以降にズレ込む可能性も報じられている。
アップルが車を、つまり「アップル・カー」を作るという話はずっとこれまで囁かれ続けていた。その名も「プロジェクト・タイタン」と呼ばれる計画だが、極めて秘密裏に行われてきたので定点的に情報が小出しにもたらされるのみだった。
「これまで、計画のため1000人のスタッフを採用したが、その大半がレイオフされたとか、秘密のオフィスがベルリンで発見された…などといった報道もありましたね。15年にアップルが横浜市のパナソニックの工場跡地を取得して、技術開発センターを作ろうとした際にも、日本にある電子部品と自動車関連メーカーの集積に目をつけ、このセンターを拠点にそれを引き継ぎ、生かすのでは、との見方もありました。これらの情報をよそにアップルは車の製造を公式に認めたことはありません。ですが、自動車関連の特許を最近になって多数取得していることが確認されていたので、何らかの動きがあるのではとの見方が強まってはいました」(経済ジャーナリスト)
自動運転車はビッグデータをAIで分析するという高度なIT技術とデータ収集能力が必要。だからグーグルと並ぶ携帯電話OSの巨人・アップルが登場したとあっては、世界地図は様変わりする。では、アップルの真の目的はどういったところにあるのだろう。
「自動運転システムの技術を提供すれば、ナビゲーションシステムや移動中のコミュニケーションツールなど、運転席の“交通プラットフォーム”のシェアも手にできます。アップルのことですから、ただ単に車も作りたいという単純なものとは思えませんからね。また、今でこそ好調なアップルですが、かつてはiPhone頼みと言われる収益性に悩まされていました。そこで音楽配信やウェアラブルの強化も行われたのですが、同時にスマートグラスや各種配信サービスのサブスクなど、他の収益の柱を模索することも同時に行われていたので、更なる事業の多角化の試みと考えることもできます」(前出・経済ジャーナリスト)
9月にはテスラがトヨタの時価総額を超えるなど、このところEVではテスラの躍進が目立つが、そこにアップルの参入ともなれば、業界の勢力図は全く新しいものとなるだろう。
(猫間滋)