今年5月、恋愛リアリティー番組「テラスハウス」(フジテレビ系)に出演していた女子プロレスラーの木村花さん(享年22歳)が、ネットで誹謗中傷を受けるなかで自死した問題に新展開があった。
警視庁はTwitterで木村さんを中傷したとして大阪府の20代男性を侮辱容疑で書類送検したことが12月17日に明らかとなった。
男はTwitter上で《いつ死ぬの?》《
この報道を皮切りにネット上では加害者の20代男性に対する中傷コメントが相次いでおり、加害者の個人情報を特定し、制裁を加えようとする、いわゆる“ネット私刑”の動きが見られている。ネットの匿名掲示板などでは《実名報道はよ》《大阪の20代からどこまで特定できるかな?》《誹謗中傷しているやつらの見せしめとして顔写真公開しろよ》と正義感を振りかざし、加害者を中傷するようなコメントが寄せられている。
作家でブロガーのはあちゅう氏(34)はTwitterでこのニュースを引用する形で「『傷つけたいと思った』って恐ろしい・・・。本名と顔写真つきで報道してほしい。花さんはかえってこないのに。苦しいな…」と投稿した。彼女自身も15年以上にわたり、ネットの誹謗中傷の標的とされてきた経験があり、木村さんの件を機に「今後は訴えます」と誹謗中傷を繰り返すアンチに対しSNS上で宣言していた。自身も誹謗中傷に苦しめられた経験からか、加害者の個人情報が守られる報道に感情的になってしまったのだろうか。
この「本名と顔写真つきで報道してほしい」というツイートには《顔写真掲載は加害者家族にも多大な影響があるし負の連鎖になってしまいます》《これは共感できない。誹謗中傷がなくなるようにしなければいけないのに新たなターゲットをつくってどうする》などと指摘する声が相次いでいる。
木村花さんの母・木村響子さんは警視庁が書類送検への方針を固めた16日、「花を誹謗中傷した加害者の送致につきまして」と題したコメントをTwitterに投稿した。そこでは公式発表があるまでコメントを控えるとしつつも「マスコミや皆様に対してお願いがございます。加害者の方に対する誹謗中傷等はされないようにお願いいたします」「法律できちんと裁いていただきますので、それ以外のことは望んでおりません。加害者が次の『被害者』になるような悲しい連鎖は、花も望んでいないはずです」と呼びかけた。
加害者を許せないという気持ちは“ネット私刑”に向けるのではなく、今後のネット社会から誹謗中傷をなくすことに向けるべきだろう。“悲しい連鎖”をなくそうと母・響子さんが鳴らした警鐘を我々はきちんと受け止めなければならない。
(浜野ふみ)