原巨人が進める「セ・DH制導入」先送りの敗因とMLBナ・リーグとの関係

 セ・リーグの指名打者(以下=DH)制導入は、またもや失敗に終わった。しかし、この議論は今後も続けられそうだ。

「巨人が試験的に設けてみるべきと議案提議したものの、4球団の反対および先送りという判断で否決されました」(スポーツ紙記者)

 DH制導入の是非が話し合われたのは、12月14日に開催されたセ・リーグ理事会でのこと。巨人の山口寿一オーナーの名前で「2021年シーズンのDH制暫定導入を提案する文書」が提出され、そのプラス要素のひとつとして、《メジャーリーグでもナショナル・リーグが今季DH制を導入し、来季も継続する方向》と説明していた。

 ナ・リーグは9人制のスタンダードな野球だ。今季に限り、コロナ禍に選手の負担を軽減するため、DH制でペナントレースが行われた。

「ナ・リーグもDH制を導入すべきとの意見は、以前からありました。近年中に導入されると米国ファンは見ています」(米国人ライター)

 ナ・リーグのDH継続案だが、シーズン終了の見えてきた10月ごろから米メディアが何度か取り上げている。米ミネアポリス「スター・トリビューン紙」は《21年は通常通り、DH制はア・リーグのみ》と報じたが、放送局NBCスポーツは《恒久化される可能性も高い》(電子版)と、正反対のニュースを伝えていた。巨人が提出した文書の通り、ナ・リーグのDH制継続を伝える米メディアはほかにもあった。しかし、どのニュースも「possibility(可能性)」という言葉を使っていた。

「現在、メジャーリーグ機構と選手会の間で、現労使協定の話し合いも進められています。その駆け引きの材料のひとつとして、ナ・リーグのDH制が用いられているんですよ」(前出・米国人ライター)

 現労使協定は21年でいったん終了となる。新しい協定を交わすための下交渉として機構と選手会が話し合っているのだが、そこで、ナ・リーグのDH導入が駆け引きの材料に使われているようなのだ。

「ナ・リーグもア・リーグに倣ってDH制になれば、守備難の打撃専門の選手の働き口が2倍になります。機構側にすれば、選手の働き口を広げることで、選手会に『折れた、歩み寄りを見せた』という材料にしたんです。そうすれば、最低年俸額のアップなどで譲らなくても批判されませんから」(前出・米国人ライター)

 野球のレベル向上、選手の出場機会アップといった“純粋な提案”をしているのは、原辰徳監督だけのようだ。巨人はセ・リーグのDH導入の議論を深めていきたいはず。だとしたら、労使協定が絡むナ・リーグの話は出さないほうが良さそうだ。

(スポーツライター・飯山満)

スポーツ