性的行為が招く頭痛、疲労感、うつ状態…現代の奇病「絶頂後症候群」とは?

 パートナーと性的関係を持った後、高い満足感を得られることは実体験で感じている人も多いだろう。エンドルフィンやオキシントンといったホルモンが分泌されることは知られているが、心理学者のサザンメソジスト大学のアンドレア・メルツァー教授は「行為後48時間は高揚感が持続する」という内容の研究論文を2017年に発表。しかも、年齢や性別、交際期間、性格などに関係ないという。

 だが、その一方で多幸感を得られるはずの営みの後、体調不良に陥るという症例がごく稀ながら世界各地で報告されている。海外ではPost-organism illness syndrome(POIS)の名称で知られ、日本では「絶頂後症候群」などと呼ばれている。

 これは行為後、最長数日間にわたって頭痛や鼻づまり、強烈なだるさに疲労感、うつ状態、集中力の低下などが起きるといったもの。命に別状があるような内容ではないが、日常生活や仕事に大きな支障を及ぼしているケースもあるそうだ。

 その原因として考えられるのは、自律神経や分泌物の乱れのほか、女性より男性の患者が多いことから行為後に放出される男性の体液に対するアレルギー反応など。ただし、諸説があるが現時点で詳しいメカニズムは明らかになっていない。治療法も未だ確立されておらず、それ以前に病気の存在を知らない医師も珍しくない。

 症例の少ない奇病であることに加え、セクシャルな内容に関わる疾患のため、実際には誰にも相談できずに悩んでいる人が多いと思われる。しかし、性的行為を行わなければ発症をある程度防げるとも言われており、“隠れ患者”たちはそうやって自己防衛しているのかもしれない。

 それでも性的な営みは子作りのための単なる生殖行為だけではなく、パートナーとの大切なコミュニケーションの手段でもある。結婚や恋愛を諦める可能性もあり、そんな人生はあまりに辛すぎる。1日も早い原因特定と治療法の確立を願うばかりだ。

(トシタカマサ)

※写真はイメージです

ライフ