日本海のほぼ中央に位置する大和堆は資源豊富な漁場として知られ、日本の漁業者によりカニ籠漁、底引き網漁などが行われてきたが、とりわけ盛んだったのがイカ釣り漁だ。ところがこの海域にこのところ中国漁船が大量に出現、荒らしまわって日本の漁業関係者もほとほと困り果てているという。
「違法操業する中国漁船があまりに多く、日本の漁船が割って入ることもできないほど。去年は北朝鮮の漁船が多かったのが、今年はごくわずかで、代わりに中国漁船が登場してその数なんと40000隻。海上保安庁も退去を求めるのに手を焼いています」(全国紙記者)
そこでこの目にあまる違法操業が国際問題化し、「第2の尖閣問題」になるのではとの懸念が高まっているが、当の中国は、王毅・外相が日本を訪れた際の11月24日、「一部の真相が分かっていない日本の漁船が絶えなく魚釣島の周辺水域に入っている事態が発生している」と発言し、日本側の猛反発を買っているぐらいだから、第1の尖閣も第2の尖閣もないのだろう。
その尖閣や大和堆に入り込む中国船団の中には、「海上民兵」なるものが多く含まれるとされる。普段は普通の漁民だが、必要に応じて軍隊の一部として働く。一種のパートタイムのようなものだが、中国国内でその軍船の数は3000隻に及ぶとされる。中国人民解放軍は、民間人の中にも武力を保持しているのだ。
ところが翻って日本の自衛隊。その人員充足率はおよそ8割でしかなく、常に人手不足の状態だ。それで中国の脅威に対応できるのか、不安がよぎるのは当然だ。
そこで防衛庁では2018年から自衛隊の「省人化」を進めている。つまり、自衛隊員が足りない分をAIなどのテクノロジーで補おうというのだ。
「2018年12月に閣議決定された『防衛計画の大綱』では、この慢性的な自衛隊員不足を『喫緊の課題』として対処すべき問題としています。そこで技術の研究開発を進めて、少ない人員でも任務を遂行できる体制を整えようというわけですが、少子高齢化、人口減で働き手不足なのは自衛隊も同様ということです」(自衛隊に詳しいジャーナリスト)
例えば、人体の関節部に装着して電動モーターの動きで重いものの上げ下げをサポートする「パワードスーツ」や、遠隔操作の小型偵察機などだ。これなら大規模災害時の救援・救護や尖閣諸島などの島しょ防衛でも活用が可能だ。
そしてその研究の大きな成果の1つが先日、日の目を見た。
11月19日、自衛隊の新型護衛艦「くまの」が、岡山県玉野市の三井E&S造船艦船工場から、海上自衛隊音楽隊が演奏する軍艦マーチに送られて瀬戸内海に進水した。2022年3月に就役予定で、平時はそれこそ尖閣などの警戒監視活動を行い、有事には対潜戦、対空戦、対水上戦にも活用できるようになる。
この「くまの」の最大の特徴が、人手が要らないことだ。通常なら200人の乗員を必要とするところが、わずか90人と半分以下で運用できる。しかも乗員の勤務も交代制というから、まるで政府が進める「働き方改革」が実現したような仕様なのだ。
日本の技術革新の賜物ということなのかもしれないが、2020年「防衛白書」によれば、中国の海上隻数750に対し日本は140しかない。はたしてAIで補える?
(猫間滋)
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