1972年の創業のパイオニア的存在で、プロ御用達から初心者モデルまで…。日本が世界に誇る電子楽器のローランドの再上場が11月11日、東京証券取引所によって承認された。予定日は12月16日で、1部になるか2部になるかは未定だ。
「公開価格は今後決定されますが、時価総額の想定価格は891億円の大型案件になります。今のところ今年一番の大型上場が雪国まいたけの876億円なので、年末の駆け込みで今年最大のIPO(新規株式公開)となります」(アナリスト)
ローランドはかつて東証1部に上場していたが、08年のリーマン・ショックで国内外の販売が落ち込み、13年まで4期連続赤字の経営危機に陥っていたことから、14年に経営再建のためにMBO(経営陣による買収)で上場を廃止した。そしてその後、経営が改善。20年12月期は売上高652億円、純利益39億円を見込んでいる。
ところで、こうして新たに上場する企業もある一方、今年はMBOによる市場からの退場が相次いだ。既に10件にのぼり、9年ぶりの2桁を記録している。有名どころでは、ニチイ学館、キリン堂ホールディングス、日本アジアグループなどだ。
「理由としては金融緩和で市場に溢れた投資マネーがM&A市場に流れ込んでいること、モノ言う株主による株主提案が活発化していることに対する企業防衛、ポストコロナを見据えて株主の意見に振り回されない環境下での新たな経営の構築などが考えられます。それと最近の傾向としては、以前は株式の買い取り資金は金融機関からの借り入れで賄っていたものが、今は投資ファンドと連携して調達していることですね」(前出・アナリスト)
確かにローランドの場合も資本参加したアメリカの投資ファンドと連携して行われた。そして再上場にあたっては、投資ファンドが保有する発行済み株式の43%を放出する形で売り出されることになっている。
社会経済が不穏な空気に包まれれば、却って再建屋商売は儲かるということか。
(猫間滋)