未曽有の航空不況!三菱重工「社員出向」でも“ジェット機開発”継続の理由

「ANAに続いて重工までが!」

 と、驚愕せざるを得ないニュースが相次いでいる。10月27日に全日本空輸(ANA)を傘下に持つANAホールディングスが5000億円以上の赤字で、一時的な人員削減のためトヨタ自動車を含む数社に社員の出向先として受け入れ要請を行うと報じられたが、翌28日には今度は三菱重工がやはりトヨタを含むグループ外の企業に出向社員の受け入れをお願いすると伝えられた。

 巣ごもり需要で潤う一部の業種以外、コロナ禍で苦しいのは全世界共通。それでも困った時にすがれるのは日本のトップブランドということか。まさにトヨタ様様なのだが、受け入れ先のトヨタも大変だろう。

「(出向の対象者になると目される)キャビンアテンダントになんの仕事をやってもらうのだろう」などと余計な心配をする声がネットで上がるのも当然だ。

 その他でも、20年9月の中間決算がJR東日本で約2600億円の赤字、JR東海も約1000億円の赤字と、運輸系企業はどこもコロナ禍をモロに食らって青色吐息というのが現状だ。

 三菱重工はもちろん運輸の会社ではないが、初の国産ジェット機の開発凍結が20日に伝えられたばかり。悲願だった一方、もともと嵩んでいた開発費をさらに投じたところで、今後しばらくは航空業界で需要が見込めるとは思えず、当然の決断とも言えるだろう。

 その後の29日、同社は今後は開発費を従来のおよそ10分の1の100億円程度として開発を継続すると発表したが、その背景を経済ジャーナリストはこう読む。

「同社では国産ジェットの開発と併せて、590億円でカナダの航空機大手のボンバルディアの保守・販売サービス事業の買収を6月に終えて新たな子会社をカナダに立ち上げたばかりでした。ところが国産ジェットの開発凍結では何のための買収だったか宙に浮いた形になってしまいます。もちろんそれだけが理由ではないでしょうが、最悪のタイミングでの巨額買収に、短期的には社内外に説明するためのつじつま合わせの面もないことはないでしょう」

 社員の受け入れに失敗したM&Aにと、各方面で帳尻を合わせるためにいろいろと大変なようだ。

(猫間滋)

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