近年、未曾有の危機は一定期間をおいて繰り返し発生している。08年のリーマン・ショック、11年の3.11東日本大震災、そして今年の新型コロナウイルス……。加えて、新型コロナウイルスが中国・武漢を発生源として世界中に蔓延したように、グローバルに世界がつながる現在、もはや外国で起こる災厄は対岸の火事とは言えない時代だ。
さて、そんなグローバルに世界崩壊のリスクを抱える今、どんな危機が起ころうとも、加入さえしていれば肉が届くという、「肉保険」とも言うべき保障サービスが登場した。その名も「ブラック・スワン食料保障」。ブラック・スワンとは、「あり得なくて起こり得ないことが起こる」ことの例え。かつてヨーロッパでは黒い白鳥は存在しないと思われていたものが、現実に発見されたことに由来する。つまり、想像を超えた未曾有の災厄が起こった時でも食料としての肉だけは保障するというシステムだ。
今回このサービスを始めたのは大阪の食肉輸入卸業者の「G.U.サプライヤーズ株式会社」。同社ホームページの案内にはこうある。
《あるエコノミストが数年前、『アメリカや日本がデフォルト(債務不履行)を起こす可能性は30%程度』と警鐘を鳴らしていましたが、今回のコロナ騒動でますますその可能性は高まったと言えます》
そして、デフォルトのような国家破綻の危機が生じた時、食料自給率が37%の日本の場合、飼料をほぼ100%輸入に頼っている現状では最初に肉類が不足すると指摘。この「保障」の必要性が語られている。その斬新すぎる中身とは…。
1口1万円の加入金を支払うとそこから1年以内に食糧危機が起こった場合、10カ月の間、鶏肉なら2キロ、豚肉なら1キロの肉が届けられるという。1人5口まで、1家族で25口まで加入でき、継続して加入金を支払い続けることで1口当たりの料金が安くなる。
あたかも損害保険のような仕組みだが、その名に「保障」とあるように、このサービスの場合だと損害額の証明をする必要がなく、日経新聞の指標が基準に達すれば、自動的に給付が受けられるのが大きなメリットとも言える。事実コロナでは国家の破綻までは至らなかったが、マスクや消毒液が店頭からなくなり、群衆パニックからトイレットペーパーのような日常必需品が品薄になり、果ては科学的に根拠のない言説からイソジンなどのうがい薬が買い占められるという現実を経験したばかりだ。
「コロナ禍では貧困国で食糧難が生じて穀物輸出で規制に動き出す動きもありました。日本は米や野菜、魚介類、果物の主食はなんとか自給できていますが、大豆、小麦、肉の自給率は10数%以下で特に低い。やはり食料安全保障の面では極めて不安定なのが事実です」(経済ジャーナリスト)
いつ届くかわからないマスクや給付金で国民が右往左往した経験からも、なんらかの自衛策はいずれにしても必要だろう。
(猫間滋)