アート引越センターがヤマトとの「協業」で得られる意外なメリットとは?

 10月21日、宅配便大手のヤマトホールディングス(HD)が、「アート引越センター」を運営するアートグループホールディングス(GHD)と引っ越し事業で協業の検討を始めたと発表した。協業はヤマトHD側から持ちかけられたというが、ネット上では《アート側のメリットは?》という疑問の声も上がっている。

「ヤマトHDによれば、『両社グループの経営資源やノウハウを相互に活用することで、それぞれの顧客にさらなる利便性を提供できる可能性が高い』と協業の検討を開始したそうで、運送業での協力や業務の効率化、新事業の共創などを目指していくといいます」(経済誌記者)

 ヤマトHDの引っ越し事業を担うヤマトホームコンビニエンスは18年に31億円にも及ぶ代金の過大請求が発覚したことで、該当する営業所の車両使用停止などの行政処分を受けた。ようやく今年9月までにすべてのサービスを再開したところで、まだまだ受注の回復が遅れている。そのため、ヤマトHD側には協業のメリットがあるが、アートGHDにはどんなメリットがあるのだろうか。

「もちろん、今回の協業が実現すればアート側にもメリットはあります。アートはここ数年、3〜4月の繁忙期には受注を受けきれないほど人員が不足しており、逆にヤマトは受注回復の遅れから人員が余っているため補い合うことができるのです。また、大阪に本社を構えるアートは関西圏では圧倒的なシェアを誇りますが、関東圏でのシェアは決して高くありません。関東圏に強いヤマトと協業することで、シェア拡大を狙いたいという考えもあるのではないでしょうか」(経済ジャーナリスト)

 業界トップの売上を誇るサカイ引越センターが7月に発表した決算資料によれば、4−6月期の売上高は前年同期比で微減となったものの、作業件数は増加傾向にあったという。コロナ禍のリモートワークの定着で郊外や地方への“移住”の動きが広まるなか、コロナ需要を取り込んでwin−winの関係を築けるか。協業の行方を見守りたい。

(小林洋三)

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