残業175時間で月給26万円!?「ワタミ」是正勧告で問われる“ホワイト化”の虚実

 外食大手の「ワタミ株式会社」に、残業代未払いに関する労働基準法37条違反の是正勧告が出されていたことが9月29日までに明らかとなった。高崎労働基準監督署(群馬県)の勧告は9月15日付。かつてはブラック企業の代名詞存在ともバッシングを受けたワタミも最近は“ホワイト企業化した”とメディアに取り上げられる機会が多かったが、変わらないブラック体質にネット上では厳しい批判の声が殺到している。

「NPO法人POSSE代表で雇用・労働政策研究者の今野晴貴氏が公表したところによれば、労基署に申告したAさんは『ワタミの宅食』で正社員として勤務していたが、6〜7月には残業が過労死ラインの2倍となる月175時間に及んでおり、さらに残業代は会社によって固定されていたそうで、これだけの長時間労働をしていてもAさんの給料は26万円だったといいます」(社会部記者)

 最近、何かと“ホワイト化”が取り上げられることが多かったワタミだが、そこにはカラクリがあった。そもそも、ワタミがホワイト企業と言われるようになったのは今年1月にワタミグループの居酒屋チェーン「三代目鳥メロ」が「第6回ホワイト企業大賞」で特別賞を受賞してからのこと。しかし、この賞はエントリー費10万円を払えば応募した企業のほとんどが何らかの賞を受賞出来るというもので、同賞の企画委員もネットメディアの取材に「はっきり言って(受賞の)明確な基準はありません」と語っているように、ホワイト企業として明確な基準を満たしたというわけではないのだ。

「昨年10月にワタミの代表取締役会長兼グループCEOで創業者の渡邉美樹氏が復帰していますが、これが再度ブラック体質を覗かせ始めた理由と言われても仕方がありません。『365日24時間、死ぬまで働け』『営業12時間の内にメシを食える店長は二流』『給料が低くても会社に貯金してると思いなさい』などのブラック格言を残し、ネット上では何かと揶揄される渡邉氏ですが、実は『ホワイト企業大賞』を受賞した際にも『数年前、ブラック企業批判を受けた時、「本当のブラック企業なら全社員がやめ、会社は潰れている」そう、繰り返しました』とするなど、過去に過労で自死者まで出し、世間から猛批判されたにもかかわらず、ブラック企業の評価に反発しているのです。そんな渡邉氏の復帰で再びブラック体質が色濃くなった可能性は十分にあると思います」(ITジャーナリスト)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて売上を伸ばすワタミの宅食だが、その影には使い倒される社員の存在があったということか。

(小林洋三)

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