29歳の山ガールが遭遇した恐怖のストーカー男「登山計画もルートも筒抜けに」

「山好きに悪い人はいないってよく聞きますけど、妄信するのも危険ですよ。とくに女性一人で泊りがけの登山は気をつけたほうがいいですね。私のようにカレシがいても、『あ、この人って寂しい女性なんだ』って目で見られますから」

 こう語るのは都内のIT企業に勤めるA子さん(29)。登山歴は5年で、どこかサバサバした雰囲気を漂わせている。

 近年、テレビや雑誌で「山ガール」の特集が組まれ、「山好き」を公言する女性は珍しくなくなった。とくにこれからの紅葉シーズンは登山にうってつけ。これから山登りに挑戦しようという女性は多いかもしれない。そうした女性たちのために、山でストーカー被害にあったというA子さんの証言を紹介したい。

「きっかけは昨年の登山です。女友達と2人で長野の山に泊りがけで登ったのですが、そこの山小屋で夕食時に男性3人のグループと隣り合わせたんです。たわいもない会話で盛り上がって、中でもMさんという40代半ばくらいの男性は知識も豊富でいろいろ教えてもらったんですね。学校の先生をしているそうで、『今度は生徒を連れてくるかな』なんて言ってたから、『いい人だな〜』っていうのが第一印象だったのですが…」(A子さん)

 その夜は何事もなく就寝。A子さんは翌朝、女友達と2人で山頂を目指した。山頂では一足先にM氏を含む男性グループが到着していて、温かいドリップコーヒーを御馳走になって無事に下山したという。信じられない出来事はそれから約1カ月後に起きた。

「関東近郊の山に単独で登ったら、入り口でたまたまMさんとバッタリ。『ああ、あの時の…』なんて盛り上がって、途中まで一緒に歩いたんですよね。でも私、一人が好きだから、何かと理由をつけて、彼とは別れたのですが…。その山は下山するルートがいくつもあって、『もう会わないだろうな』と思っていたら、下山途中でも遭遇してしまったんです。その時は偶然も重なるもんだな…って程度にしか思わなかったのですが、以降も何度か山で待ち伏せされているようなことがあって、これはマズイって」(A子さん)

 M氏とは連絡先を交換したわけでもないのに、なぜ登山計画が筒抜けだったのか。その原因は最近流行りの「登山アプリ」にあったという。

「登山ルートとかをマップで教えてくれるアプリがあって、Mさんも同じアプリを使っていたんですね。最初に会った時、『まあ、いいか…』という気持ちで“友だち登録”してしまったのが、いけなかったんです。GPSでお互いの位置を知らせてくれる機能があるのを知らなかったんです。それに、『今週末は〇〇山に登ろうと思ってます』とか、アプリ内の日記に書いていたのもよくなかったんでしょうね。女友達に指摘されて、すぐにそのアプリを削除しましたけど、今でも山に登るたびに、彼が姿を見せるんじゃないかとヒヤヒヤですよ」(A子さん)

 遭難を防止するための「登山アプリ」が、ストーカー男に逐一、位置情報を知らせていたとは皮肉な話だが、最近は同様のストーカー被害が多発しているという。アウトドア雑誌の編集者いわく、

「私が知っているケースでは、山頂から家までつきまとわれた女性もいます。下山はバラバラでも、家に帰ったらその男が玄関前に立っていて大きな恐怖を感じたとか。確証はありませんが、おそらく原因は登山届。山登りをする人は、“万が一”の時のために、登山ポストに登山届を提出します。この登山届には、住所や勤務先、緊急連絡先などの個人情報を記入するのですが、この登山ポストの管理が不十分なケースは多く、鍵が壊れていることもしばしば。この登山ポストから登山届を抜き取られたのが原因ではないかと、その女性は語っていました。施錠が十分ではない場合、登山届を山小屋のスタッフに直接手渡しするか、可能であれば地元の警察にファックスで提出するなど、何らかの自衛策をとる必要があるでしょうね」

 滑落や落石、獣との遭遇などなど、山には危険がつきもの。とはいえ、誰もが登山を楽しめるよう、こうした“人災”だけは勘弁してほしいものである。

(平沼エコー)

※写真はイメージです

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