菅政権「オンライン診療」拡大でも「LINEドクター」が不安視される理由

 菅義偉新首相が就任最初の会見で課題として挙げたことで、2018年の保険適用以降なかなか広がってこなかったオンライン診療は、ポスト・コロナを見据える意味でも今後は政府肝いりで拡大するのはほぼ確実だろう。

 これに先駆ける形でLINEは9月10日にオンライン診療サービスの「LINEドクター」を11月から始めると発表した。病院の予約やビデオ診療、決済がLINEの画面上で行えるという。診療以外は医師もユーザーも原則無料で利用できるとあって、日本の人口の67%、8400万もの人が利用する会話アプリなだけに、非常に多数の利用が見込まれそうだ。

 LINEでは既に昨年12月から健康相談サービスの「LINEヘルスケア」をスタートしていて、ヘルスケア領域への並々ならぬ意欲が伺える。

「LINEヘルスケアでは厚生労働省と協力してコロナ対策に取り組んでいて、アプリ上でコロナの全国アンケート調査を行うなどしています。ところがこれが、アンケートに答えているとやがてLINEヘルスケアに誘導する画面が現れるという仕組みで、しかも厚労省からの支援で、無料で相談が行えるというオマケ付きのものでした。そのためネットでは、『囲い込み商法が凄まじい』なんて揶揄する声も聞こえていました」(経済ジャーナリスト)

 さてそのLINEヘルスケアだが、オンライン診療への移行を前に、その安全性に疑問符が付きかねないチョンボをやらかしている。8月2日、LINEヘルスケアのサービスに登録をして相談を行っていた医師に不適切な対応があったとして、当該医師の登録が停止されたのだ。

 事の発端はやはりSNS上だった。

 ツイッター上にサービス利用者の報告が上がったのだが、その医師は精神的な辛さを訴える相談者に対して、手首を切る行為などを挙げつつ、

「OD(過量服薬)で発散するのは低レベル」、「言葉にできないやつはガキンチョ」、「よくいる世間知らずの10代の女の子」

 と、まるで罵声を浴びせるかのような対応をしていたという。もちろんSNSは炎上し、LINEは対応を迫られ、医師の登録停止という経緯を辿った。

 そして今度のLINEドクターへの移行なのだが、信用性が確保されたのかどうかはちょっと怪しいという。

「LINEドクターの発表後、ヘルスケアの方で相当な見直しが行われたかと思いきや、登録医師の中には学歴が示されておらず、不自然に幅広い診療科での相談が可能で、にもかかわらず診療経験が浅い医師が存在していることが確認されています」(前出・経済ジャーナリスト)

 診療では単なる「医療相談」とは比較にならないほどの安全性が問われることになる。診療スタートまでに疑念は払しょくされるのだろうか。

(猫間滋)

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