家系ラーメンの老舗「破産申請」にファンが悲鳴!何が「六角家」を潰したのか

「家系ラーメン」の老舗「六角家」が破産申請していたことが9月15日に明らかとなり、家系ファンの間に衝撃が走った。

 帝国データバンクによれば、「六角家」を運営する「有限会社六角家」は創業から2年後の1990年に設立。1994年に開業した「新横浜ラーメン博物館」への出店により人気に火がつき、横浜市内はじめ首都圏、札幌、名古屋、大阪、高松などに直営店を拡張。その後、全国規模の知名度を利用し「六角家」の名を冠したカップ麺がコンビニで販売されるなど順風満帆だったが、代表の体調不良も重なり、2017年10月末には店舗を閉店。そして今年9月4日に横浜地裁より破産手続き開始決定を受けたと伝えられる。

 家系ラーメンに詳しいフードジャーナリストが語る。

「六角家は家系ラーメンの中でも、吉村家、本牧家と並んで『家系御三家』として、多くのファンに親しまれてきました。ところが、経営悪化で、15年には消費税の滞納が発覚。17年6月には店主が体調不良のため休業し、同年10月に閉店。以降はコンビニやスーパー向けのカップラーメンのロイヤリティでしのいでいたという噂もあります。その需要も、全国に増えつつある大手資本の“家系”に食われてしまったという見方もできます」

 近年、街中で急増していた「家系」を謡うラーメン店の中には、異業種からの“参入組”も多く、一部マニアの間では「味を似せただけのニセモノ」と批判の対象となっていた。

 そもそも家系ラーメンは、豚骨や鶏ガラから取った濃厚な“ケモノ汁”に、醤油ベースのタレを混ぜた豚骨醤油のスープ、そしてモチモチの太麺が特徴だが、一人前になるためには「湯切り」だけで4〜5年はかかるとされ、きちんと修行を積んだ者でないと、独立しても家系御用達の製麺所から麺を卸してもらえないという噂が流れたほどだ。

 家系ラーメンの店主を務めた男性が語る。

「本来、家系ラーメンとは総本山の吉村家で修行した人たちが独立する形で『家』の屋号を引き継いで拡大していったもの。修行は厳しく、1日に何十キロという鶏ガラや豚骨を煮詰めていく作業は過酷を極め、さらに麺茹でにも独自のルールがあります。大鍋で一度に大量の麺を茹でて、平ザルで一食分ずつ湯切りするのがならわし。鍋の中にある10人前もの麺から、固め、普通、やわらかめとそれぞれ取り分けていくには熟練の技を必要としますが、手首への負担はかなり大きい。私の場合もそうですが、腱鞘炎でこの湯切りができなくなって、閉店を決意する店主は意外と多いんです。何人も社員を雇って後継者を育てていた店ならば話は別ですが、カウンター数席だけでやってきた小さな店は消える運命にあるのかもしれませんね」

 さらに、もう一つ、六角家衰退の要因は消費者ニーズの変化にあるのでは、と語るのが前出のフードジャーナリストだ。

「厳選した素材を厳しい修行に基づいた手法で提供し、だからこそ、その味を求めて遠方からも客が押し寄せた。ところが、最近、街でよく見かける『家系』の名を借りただけのチェーンでは、平ザルではなくテボという円筒状の器具を使っていて、味の違いは明らか。にもかかわらず、客が流れていってしまったのは事実。わざわざ遠くまで好みの家系の店に足を運ぶより、近くで“似た味”を求めるようになってしまったのも衰退の原因かもしれません」

 全国的な知名度を誇った老舗が消えてしまうことは、ファンにとって残念な限りだが、別経営の「六角家戸塚店」はじめ「六角家」を冠した姉妹店は営業継続中とのこと。

 ともあれ、「六角家」が家系ラーメンの歴史に名を刻んだことだけは間違いない。

(灯倫太郎)

※写真はイメージです

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