外食大手のコロワイドは、定食チェーン「大戸屋」を運営する大戸屋ホールディングス(HD)の株式公開買い付け(敵対的TOB)が成立したと発表した。コロワイドは窪田健一社長ら現経営陣を解任して刷新すると見られているが、新たな取締役には大戸屋の実質的な創業者である故・三森久実氏の息子である智仁氏も候補になっていると目され、ネット上では智仁氏の復活劇に《リアル半沢直樹》との声も挙がっている。
今回のコロワイドによる大戸屋HDの敵対的買収は”乗っ取り”とも言われているが、創業家側からすれば、そもそも現在の経営陣こそが「会社を乗っ取った」と主張している背景がある。
大戸屋は叔父で養父の三森栄一氏が経営していた大衆食堂を久実氏が引き継ぎ、1983年に株式会社大戸屋を設立して一代で大手外食チェーンに上り詰めるまでに成長させたのだが、2015年に久実氏が57歳の若さで逝去すると雲行きが怪しくなっていく。
久実氏は生前から息子の「智仁を後継者に」と親族や経営幹部らにも伝えていたというが、12年に社長に就任した久実氏の従兄弟でもある窪田氏は、智仁氏に選任されていた常務取締役海外事業本部長の仕事の引き継ぎを行わせず、智仁氏はその後、常務取締役からも外されてしまうのだった。
さらには支払われるはずだった創業者功労金が大幅に減額されるなど、創業家と経営陣との対立が深まり、ついに智仁氏は16年に追い出されるような形で大戸屋を退社。「これはお家騒動ではない、会社の乗っ取りだ」と大戸屋経営陣を痛烈に批判し、持っていた大戸屋株のすべてをコロワイドに売却したのである。
「創業家から約19%の株式を取得したコロワイドは大戸屋HDの大株主となり、今年6月の株主総会で経営陣の刷新を求める採決をとりました。残念ながらその採決は否決となりましたが、今回のTOBによって智仁氏が取締役に返り咲くことが確実視されているんです」(経済ジャーナリスト)
このまま智仁氏が取締役に就けば、まさに「やられたらやり返す」を地で行く乗っ取り劇。ようやく一件落着といくか?
(小林洋三)