トランプの禁止命令で勃発!「TikTok」買収劇にウォルマート参戦のワケ

 今、世界中のITビジネス関係者やSNSユーザーなどが一番の関心を持ってニュースを眺めているのが、アメリカにおいてTikTokがどこの企業に買収されるかだろう。

 アメリカの事だけに、発端はやはりあの男だった。7月31日、トランプはアメリカ国内でのTikTokの使用を禁止すると言い出した。TikTokの親会社はByteDance(バイトダンス)で中国企業だからだ。SNSはユーザーの個人情報、その他ビッグデータなどを得ることができる。これが中国側にわたっては大変というわけだ。中国と対立するインドでは6月に中国企業が運営するアプリの使用禁止を発表しており、オーストラリアでも検討がなされている。

 そこで出てきた条件が、TikTokのアメリカにおける事業はアメリカ企業に売却するという案。すると手を上げる企業が出るわ出るわ。マイクロソフトが購入意欲を示したかと思えば、オラクルも手を上げ、今度はソフトバンクにTwitterも参戦、さらにはウォルマートがマイクロソフト陣営に加わってと、ドタバタ劇が繰り広げられている。

 ところで特に日本人にとって不思議なのは、これら名だたるIT企業に交じって、なぜ小売業界の雄でスーパーマーケットチェーンのウォルマートがここで登場するのかという点ではないだろうか。

 経済ジャーナリストが解説する。

「ウォルマートのCEO(最高経営責任者)にダグ・マクミロンが2014年に就任して以来、彼は会社を生まれ変わらせようと様々な改革に着手してきました。アメリカ国内の新規出店を停止し、ブラジルなど複数の国からは撤退、一方でEコマースのスタートアップに多額の投資をしてきました。つまり、店舗型の小売りからネットでの小売りにシフトさせようというのです」

 その先例が中国にあるという。中国ではスマホを通じた購買習慣がかなり進んでおり、ユーザーはアプリで商品の動画を見てから購入するかどうかを決める。しかもその際、インフルエンサーが商品を紹介していて、ユーザーからの細かい問い合わせにも即座に返答が届くのだとか。つまり、スマホを通じたインタラクティブな通販が日常的に行われているのだ。

「アメリカでは特にマーケティングの世界で『Z世代』という言葉がよく使われています。1990年代中盤以後に生まれた世代で、つまり、生まれながらにしてネット利用が可能だった世代で、同時にスマホ世代でもあります。こういった世代の新しい購買スタイルに合わせた企業に変えないと生き残れない。だからTikTokはどうしても必要なんです」(前出・経済ジャーナリスト)

 つまりそれぞれの企業ごとに異なる思惑が潜んでいるということだが、TikTok禁止のリミットは9月15日。どの企業が最終的に価値を得るのか。

(猫間滋)

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