国内独立リーグ・ルートインBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズに入団した田澤純一投手の周辺が騒がしくなってきた。
神奈川フューチャードリームス戦で今季4度目登板をした8月14日、ネット裏に数人のNPBスカウトが陣取っていた。ルートインBCリーグに好選手がいることも視察の一因だが、「ピッチャー、田澤」がコールされると同時に、スカウト陣は身を乗り出したという。
「NPB入りすれば、一軍戦力となる可能性は高いと思います。でも、今年34歳になりました。直球に往年のスピードはなく、ボールを打者手元で小さく動かしながら打ち損じを誘っています」(関係者)
年齢的に考えれば、ピークを過ぎた右腕の獲得を本気で検討するとは思えない。しかし、往年の輝きを失ったとされる直球だが、“国内初登板”となった7月31日(対栃木)、いきなり、152キロを計測している。8月のこの時期は甲子園で交流試合があり、全国各地で都道府県別の独自大会も行われている。
「甲子園の交流戦、都道府県別の高校野球大会では『学校関係者、父母のみ』と観戦が制限されています。NPBスカウトの視察は許されていますが、人数制限だけではなく、事前に誰が行くのかを通達しなければなりません」(在京球団スタッフ)
ルートインBCリーグはそういった面倒な手続きをスカウト陣に課していないが、こういう視察がしにくい状況下でもあえて球場入りしたということは、「NPB各球団が田澤に興味を持っている」と解釈すべきだろう。
この各スカウトの視察のニュースとともに、こんな情報も飛び込んできた。去る8月5日、労組・日本プロ野球選手会はNPBとのオンラインでの事務折衝を行ったのだが、そこでいわゆる「田澤ルール」の撤廃を求めた。NPB側は即答こそ避けたが、関係者の話を集約すると、「継続審議していく」という。
「事務折衝が行われた後に田澤を視察したということは、田澤ルールの撤廃を見越して獲得を検討している球団が実際にあるのではないでしょうか」(前出・在京球団スタッフ)
ドラフト指名を拒否し、海外球団に入団したアマチュア選手は、帰国しても一定期間は契約を結ばないという12球団の申し合わせがある。その期間は、高卒の選手なら帰国から3年、大学および社会人出身者は2年とされている。この申し合わせが撤廃されたとしても、現行ルールでは田澤はドラフト指名を受けなければならない。“34歳のルーキー”誕生となるか、それとも…。
(スポーツライター・飯山満)