新型コロナ拡大による社会不安が広がる中、正社員として企業に勤める女性たちの間にも意識の変化が生まれつつある。とある正社員女性を対象にしたアンケート調査結果では、「将来は独立を考えている」という回答が、コロナ禍の前と後で3割弱から5割強へと増えたという。
そんな独立志向を持つ彼女たちが、意識を向け始めたのが「副業」だという。今回、副業に夜の性産業を選んだという30代前半のキャリアーマンに話を聞いた。田辺安恵さん(仮名)。東京都在住、独身。年収は約700万円。同世代の女性のなかでもかなりの高給取りと言える。
「勤めているのは学校教材の企画・販売を行う企業です。業界内では大手で知られていて、古い方ですので、業績は安定しています。コロナによる影響も少なかった方かと思います。入社後数年間、企画開発部の方にいましたが、一昨年から総務部の方に移動となりました。オンライン教材も扱っている関係もあって、リモートワークへの以降もスムーズでした。でも、自粛生活が続くうちに、気がついたら驚くほど精神が追い込まれていました。自粛とはいっても、結構世間では出歩いたりという人も多かったじゃないですか。でもうちの会社は、社員にも厳格な社会モラルを求める社風なんです。もしもコロナに感染したら…と社員全員がプレッシャーを感じていたと思います」
そんな安恵さん自身、テレワーク中にもかかわらず、常に誰かに見張られているかのような錯覚にとらわれたという。
「数日に一度の最低限の食料の買い出し以外はずっと家に籠っていました。入ってくるのはコロナ関連の情報ばかり。どんどん不安になり、当たり前だった日常が、薄い氷一枚の上に成り立っているように思えてきて…。それは通常勤務になってからも消えませんでした。以前はあった、会社との一体感みたいなものも不思議と薄れていったんです」
スキルアップや転職も考えたという安恵さんだったが、選んだのは「副業」としての性産業だった。
「けっしてお金が目的じゃなくて、『なんで?』って自分でも不思議に思っています。でも、コロナで、本当に信じられるのは自分だけっていう思いが強くなって、この身ひとつで稼いでいる実感を持ちたかったのかもしれません。漠然と給料をもらうのではなく、しっかりと生きるための糧を得ているという感覚を保ってないと、心の安定は得られないんじゃないかと…。あと実は学生時代に、家庭の問題で悩んでいるときに、少しの間だけパパ活的なことをしていた時期があったんです。その経験が根底にあったのかもしれません。所属したのは都内の大手の派遣タイプのお店です。バック率はそれほどよくないらしいですが、やはり男性スタッフの対応などがていねいで、安心感があるというか。性産業の勤め先まで大手を選んでしまうのは体質なんでしょうね(笑)。この仕事をはじめてから、ちょっと派手なアンダーウェアにも興味を持ち始めて、あれこれとネットで買うのも楽しみになりました。それに本業に対する気持ちも落ち着いてきました。それに、もしも何かあってクビになっても、私は一人でやっていける。そんな自信のおかげかもしれませんね」
結果的に前向きになれたのならば、これもひとつの女性のキャリアの広がりなのかもしれない。
(オフィスキング)