盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!
阪神の藤川球児が名球会入り条件でもある日米通算250セーブに、残り「5」で足踏みしている。7月11日のDeNA戦(甲子園)で負け投手となり、翌日に登録を抹消。同23日に1軍復帰してから中継ぎでの起用が続いている。抑えのポジションはスアレスが務めており、矢野監督は今後の球児の起用法に関しては明言を避けている。名球会の先輩としては、抑えのポジションを取り返して、頑張ってほしい。
本人は名球会入りや個人記録へのこだわりはないと言っているけど、手を伸ばせば届くところに勲章がある。全盛期に火の玉ストレートと呼ばれた球威はなくなってきたけど、経験という武器がある。ここは死に物狂いで獲りにいかなアカン。でないと引退したあとに必ず後悔する。
例えば、阪急の先輩の足立光宏さんも間違いなく名球会入りするはずやった。でも、10勝した翌年は11勝したら満足してしまっていた。当時は、それ以上いくら勝っても給料は上がらないということもあったかもしれん。故障にも泣いて結局、187勝で終わってしまった。僕の同学年で、ヤクルトのエースの松岡弘は191勝。2人とも相当、悔しかったと思う。
先発投手の勝ち星は5イニング以上投げないとアカンし、リリーフしだいで勝ち星が消えることもある。ゴールが目の前に見えていても、力尽きてしまうことがある。でも、球児の場合はセーブ数。極端な話、1球でもセーブはマークすることができるんやから。
250セーブという条件は03年オフに加えられた。投手の分業制が進む中で、当時の代表の金田正一さんが決めた。「250セーブは甘すぎる」という反対の声もあった。確かに200勝と比べると、ずいぶんと低いハードルになる。先発投手が200勝しようとすれば、シーズン15勝を14年続けてやっと到達する。これは、中6日でローテーションを回す今の時代には相当難しい。実際に今後も200勝投手はなかなか出てこないと思う。シーズン前で田中将大が174勝、ダルビッシュが156勝。この2人は順調なら届くやろうけど、171勝のヤクルト石川、170勝の西武・松坂は難しくなってきた。
逆に、打者は150安打を14年で2100安打。こっちは試合数が144試合に増えたのと、選手寿命が伸びたこともあって、容易になってきている。今年は巨人・坂本が残り100を切っているし、毎年のように名球会入りの打者が誕生している。
達成者の数だけで考えると、250セーブも易しい数字ではない。今までクリアしたのは、大魔神・佐々木、高津、岩瀬の3人だけ。いずれも一時代を築いた守護神ばかり。何年も続けるのが難しいポジションということや。今シーズンを見ていても、各球団がクローザーに苦労している。球児だけでなく、日本代表でも期待されていたDeNAの山崎も苦しんでいる。抑えて当然の立場やし、ベンチやファンもやられた時のダメージが大きい。勝ち投手の権利も消えてしまうし、プレッシャーも相当なんやと思う。
それと、かわいそうなのは、やっぱり今年はボールが飛ぶ。こすったような当たりでも逆方向のスタンドに入るのはおかしい。一度、しっかり反発係数を調べてほしい。ボールのせいで投手の給料が下がったら、かなり気の毒やで。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。