世界の福本豊〈プロ野球“足攻爆談!”〉「ボーアへの外角攻めはまだ序の口や」

 盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!

 阪神が巨人との開幕カードで3連敗を喫した。今年の順位予想は珍しく阪神の優勝を推したのに、こんなに打てないのは想定外。2点、1点、1点と3試合で計4得点。片や巨人は3試合で21点。初戦は最後まで緊迫した1点差ゲームやったけど、2戦目、3戦目は惨敗やった。敗因は、どうしてもボーアに目が行ってしまう。

 ボーアは開幕前から左投手を苦手とする傾向があったけど、想像以上に深刻やな。象徴的だったのが、2戦目の2点ビハインドの7回二死満塁の場面。2番手左腕の高木の外角ストレートを3つ見逃して三振。本人の中ではかなり遠くに見えてしまっているから、振ることすらできない。まさに手が出ない感じやった。

 僕も同じ左打者で、左投手が打ちにくいのはわかるけど、ここまでひどい症状になったことはない。普通は2ストライクに追い込まれたら、多少ボール気味の球でもカットで逃げるもの。片手を離してでもファールにはできる。三振も凡打も結果は一緒やけど、まずはバットを振らんと何も起こらない。

 矢野監督もベンチで見ていて、打てる気がしなかったと思う。2戦目は7回裏の守備からベンチに下げると、3戦目は打順を4番から6番に降格させた。でも、チャンスのほうがボーアを追いかけてくる。3戦目の6回二死満塁で打席が回ると、巨人はサンチェスから再び高木にスイッチ。今度は2ストライクからバットを振ったけど、少し甘く入ったスライダーを二ゴロ。三振を怖がって当てるようなスイングになってしまっていた。結局、3試合で12打数無安打。ベンチとしては頭が痛い状況やな。

 3戦目は好調のマルテが4番に座った。確かに代役の4番はマルテか大山ぐらいしかおらん。でも、それなら去年と同じことの繰り返しになる。去年の前半戦は4番・大山を我慢して使ったけど、見切りをつけて後半は消去法でマルテが収まった。それでも最後まで得点力不足は解消されんかった。大山やマルテでは勝負できんとなって、4番候補として高い金を払って、ボーアを取ったんやから。開幕早々、見切りをつけていたら先が思いやられる。

 結局、ボーアが打たないと阪神の優勝の目はないということ。矢野監督も辛抱して使い続けるしかない。それでも、4番として機能させるには相当な修正もいる。今は相手バッテリーも、特に左投手は外角一辺倒で抑えているけど、まだ序の口の攻め。ホームベースに近づいて構えだしたり、右足をホーム寄りに踏み込んで打つようになると、今度は内角をえぐるような球が来はじめる。内角高め、外角低めの対角線の配球を克服して初めて、主砲として活躍できるんやから。

 まず、4番打者として最低限の仕事は、真ん中付近の甘い球を必ず仕留めること。厳しいコースに来たらお手上げなのはしかたないから、間違ったら放り込まれるという恐怖心を相手に与えないと、失投につながらない。4打席あれば、1球ぐらいは必ず打てるコースに来るもんなんやから。たとえ打率2割5分でもいいから、自分のスイングをしなアカン。練習試合で3試合連発を放ったように力はあるんやから。

 今年は120試合制やから、例年以上にスタートが大事。開幕3連戦以降に上昇してればいいけど、阪神は前途多難のシーズンになりそうや。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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