阪神・藤浪晋太郎投手がファームで出直し登板に臨んだ前日の6月25日、ドラフト3位ルーキーの及川雅貴投手がオリックス二軍との試合に登板し、“プロ初勝利”を挙げた。
「本人は緊張したと言っていましたが、高卒ルーキーとは思えない堂々としたマウンド捌きでした」(在阪記者)
今さらだが、「横浜高校の及川」といえば超高校級の逸材と注目を集め、球速、変化球ともに一級品の左腕と評されていた。高校野球ファンの間では「1位指名は間違いない」と予想されていたが、実際は3位。たしかに上位指名ではあるが、納得していない高校野球フリークも少なくなかった。しかし、横浜高校を知る神奈川県下の指導者たちはこう評していた。「昨夏とは別人。本当によくなっている」と——。
「昨春のセンバツで結果を残せなかったせいか、それ以降のピッチングスタイルが変わりました。自信がないのか、内外角の際どいところに変化球を置きにいき、痛打を浴びていました。コントロールを気にしすぎて直球にも威力がなくなっていました」(高校野球指導者)
イップスか……。高校3年生になってスカウトの評価が少し下がったのは、これが真相だろう。とはいえ、6月25日の及川のピッチングには躍動感があった。ドラフト指名から半年程度しか経っていないが、完全復活したと言っていい。
「香田勲男、高橋健両二軍投手コーチの指導のたまものです」(球界関係者)
イップスといえば、藤浪が思い出される。新型コロナウイルスへの感染で自己管理の未熟さを問われ、その後も練習に遅刻する失態で二軍降格となった。及川が好投した翌日、藤浪は先発登板のチャンスをもらい、3回無失点と結果を出した。同日のピッチングに対し、「直球に力強さがあった」と評価する声もあったが、「四球で走者を背負う場面もあり、一軍の打線だったら、大崩れしていた」と首を傾げる関係者もいた。
「藤浪がイップスに陥って、だいぶ経ちます。本人も努力しているようですが、二軍コーチに対し、『ちゃんとやっているのか?』と批判も集まっています」(前出・在阪記者)
26日の無失点投球だが、復調の兆しは十分に感じられた。完全復活はまだ先のようだが、及川の好投によって、二軍のコーチ陣がきちんと機能していることが証明される形となった。
(スポーツライター・飯山満)