オリンパスが6月24日にカメラ事業から撤退することを発表、同社が1936年から消費者向けカメラを手掛けて以来、とうとうその84年にも及ぶ歴史に幕を下ろすことになった。
「事業の売却先は投資ファンドの日本産業パートナーズが設立する新会社です。もともとはみずほFG系列でしたがそこから独立して、過去にすかいらーくやNECのプロバイダーのビッグローブ、ソニーのVAIOなどに出資を行ったことで知られています」(経済ジャーナリスト)
事業をスリム化し、本来の強みを生かせる形にして存続を図るのだろう。
売却に至ったのも、一般にはカメラが有名なオリンパスも今ではほぼ純然とした医療機器メーカーとなったためだという見方が強い。カメラだけでなくICレコーダーや双眼鏡も含めたこの事業の売り上げはわずか5%ほどにすぎない。スマホに高画質のカメラが搭載される現在、デジカメの市場は縮小し続けていて、この事業継続には各方面から疑問符がついていた。事実、消費者向けカメラ部門は3年連続の営業損失を抱えていた。
72年には「OM」ブランドで軽量一眼レフを販売。その後も91年にコンパクトカメラ、96年にデジカメに参入し、一般消費者に身近なカメラとして愛され続けてきた。特に08年に「ミラーレス一眼」の販売を始めてからは、そのコンパクトでおしゃれな見た目から女性の心を惹きつけ、2010年頃からブームとなった「カメラ女子」の牽引役ともなった。
「ここ数年は“お荷物事業”となっている実態に、『いつ撤退?』とそのタイミングを窺う報道が恒例行事のように行われていました。昨年にはいわゆる“モノ言う株主”の米投資ファンドのバリューアクトを経営に受け入れており、今回の決定もおそらくはファンド側の要請に沿ったものでしょう。既に5月には韓国からカメラ事業の撤退が伝えられていたので、全面撤退も時間の問題ではあったようです」(前出・経済ジャーナリスト)
なお、オリンパスは6月26日に公式サイト上で「今後のオリンパス映像製品の販売・サポートサービスについて」と題した文書を公開。デジタルカメラやレンズ、ICレコーダーなどの製品について、引き続き《サポートサービスを継続してまいります》としている。
ちなみにカメラ業界全体で言えば、「カメラマン」(モータマガジン社)が4月に、「アサヒカメラ」(朝日新聞出版)が6月にと、相次いで老舗の専門雑誌の休刊が表明されている。もともと売り上げが低迷していたところにコロナ禍が追い打ちをかけた形だが、「カメラ女子」だけでなく「カメラ小僧」たちにとって、この撤退のニュースはどう映っただろうか。
(猫間滋)