「シン・ゴジラ」で注目のブランド,ZARA「1200店舗閉鎖」でどこへ行く?

 日本でも人気のファストファッションブランド「ZARA(ザラ)」の親会社であるインディテックスが、2021年までに、現在展開しているショップを最大1200店舗閉店することを発表した。インディテックスはスペイン発祥のアパレルメーカーで、ヨーロッパ、アメリカ、アジアと世界規模で事業を展開しているが、「売上比率はヨーロッパでの売上が45%以上となっており、欧州メインの傾向が以前から続いていました。こうした事業内容に新型コロナウイルスがもたらした影響は凄まじく、2020年第一四半期の総売上高は前年比44.7%減少し、純損益は前年905億円の黒字から503億円の赤字に転落したと言われています」(経済誌ライター)

 この報道に《利用してた近くのザラ閉まりそうで泣いた》《日本撤退とかなったらザラの服買えないじゃん、つらすぎ》とZARAの閉店を不安視する消費者の声がネット上に寄せられた。

 日本のファストファッション消費者たちがこのニュースに敏感に反応を示したのは昨年10月末に日本国内全店を閉店したファストファッションブランド「FOREVER21」の前例があるからだという。

「2009年、原宿に日本1号店として『FOREVER21』が出店したときは連日ニュースに取り上げられるほど話題になりました。開店からしばらくの間は店舗前の路上に行列が出来るほどの人気で、1年経たずして来店客数400万人を突破し、初年度の売上は100億円を超えたと言われています。その後日本国内に25店舗展開しましたが、ファストファッションブームは落ち着きを見せていき、原宿や新宿などの一等地に大型の店舗を構えての経営が苦しくなったことから昨年11月までに日本国内から完全撤退しています。全盛期から撤退までわずか10年。他の安さを売りにしているブランドも後を追うのではないかと当時ネット上では議論されました」(前出・経済誌ライター)

 しかし今回のインディテックスの大量閉店は、「撤退」を示すものではない。新型コロナウイルスの影響で赤字を出してしまったものの、4月のオンライン販売売上は前年同期比95%増と急激な増加を見せた。それを受ける形で今後はデジタル面での強化に注力していく方針を公表。同社会長の「われわれのファッションを世界のどこにいるか関係なくすべての顧客に提供したい」という宣言のもと、全傘下ブランドの統合在庫管理システムを導入。注文から36時間以内には顧客の手元に商品が届くというオンラインシステムを可能とした。さらに店内の状況と太陽光量から、自動で室内温度や照明を調節するハイテク店舗を新たに460店出店し、次世代形態への移行を進めていく。

 インディテックスは「(現在展開している小規模店舗は)新しい顧客体験を提供するには適していない」と、今回の思い切った事業転換の理由として説明している。

 2016年に公開され、大ヒットとなった「シン・ゴジラ」には、「ZARA」の名を一躍日本に広めたシーンがある。石原さとみ演じるアメリカ大統領の特使、カヨコ・アン・パタースンが、着の身着のまま日本にやってきたため、まずは洋服を買おうと「ZARAはどこ?」という質問を日本の内閣官房副長官(長谷川博己)にぶつけたのだ。「シン・ゴジラ」の時代設定については諸説あるが、「2027年以降の東京」という解釈が有力と見られている。

 2027年の東京では「ZARA」はどんな業務形態となっているのだろうか、また、「FOREVER21」の二の舞にならないように最新トレンドを安価で提供し続ける事ができるだろうか。今後の再躍進に期待が高まる。

(浜野ふみ)

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