コロナウイルスの影響で全国の飲食店での、店内利用客が軒並み減っている。その中でテイクアウトとともに飲食店が頼りにしているのが「テラス席」である。通気性がよく、店内に比べて席と席のスペースを確保しやすい場合も多い。そうした飲食店の事情をふまえて、国土交通省は緊急措置として路上利用(占用)の許可基準を緩和した。
期間は現在のところ令和2年11月30日まで。施設付近の清掃等に協力する等の条件を満たせば、本来発生する占用料が免除される。個別の店舗ごとの申請は受け付けておらず、地元の協議会など、民間団体ごとの申請となる。
このテラス席の規制緩和、現在の社会状況にどのような効用があるのか、ソーシャルデザインを専門とするプロジェクトデザイナーに話を聞いた。
「非常に効果的な取り組みだと思います。自粛要請が明けてから営業再開したものの、なかなか客足が戻らずに困っている店舗が多くあります。利用者の心理としては、店内の“密”な空間に対する抵抗感がまだ根強いようです。街にテラス席が増えれば、それをきっかけにその場に人々の足が向かう可能性があります。また、いわゆるコロナ鬱となっている方も多いようですが、鬱の原因の大きなもののひとつに太陽光不足があります。テラス席で食事やカフェでリラックスしながら太陽の光を浴びるのは、コロナ鬱の解消に最適かと思います。テラス席は店内に比べて子供連れでも利用しやすいという利点もありますから、家族サービスでコロナ離婚回避なんてこともあるかもしれませんね(笑)」
フランスでは6月2日からカフェやレストランが営業再開となったが、現段階では「テラス席」限定になっているという。ニュース映像では、屋外で久しぶりのカフェタイムを満喫するフランスの人々の笑顔が映し出されたが、「テラス文化」の後進国とも言える日本ではいろいろと注意しなければいけない点も多いという。
「テラス席を提供する店舗としては、初めてテラス席を設けるという場合も多いでしょうから、様々な注意が必要です。特に気をつけなくてはならないのが、近隣の住民の方とのトラブルです。騒音、煙、匂いなどでクレームに繋がるケースが多くあります。環境に応じて、テラス席の設置時間帯や席数など、調整を心がけましょう。またあくまでも外ですので、暑さや強風、さらには虫など、屋内とは異なる環境であることを念頭に入れなければなりません。料理にホコリや虫が混入した、などのクレームが発生することもありえます。臨機応変な対処が必要とされます」(プロジェクトデザイナー)
とかく鬱屈しがちな時期が続く中、テラス席の増加が飲食店、さらには街の活性化をもたらすかもしれない。
(オフィスキング)