がん克服の阪神・原口文仁が示した「正捕手」の存在感、矢野監督の真意は?

 先発ローテーション入りを狙う新助っ人、阪神のジョー・ガンケル投手が広島戦に先発し、4回被安打2無失点と好投した(6月3日)。このピッチングは、トラの捕手事情にも大きな影響を与えそうだという。

「大腸がんを克服して復活を遂げた原口文仁捕手と息が合うようです。正捕手の梅野隆太郎を休ませる目的もあって、ガンケルが先発する試合は、原口がスタメンマスクをかぶる可能性が十分にあります。昨シーズンは捕手としての出場は17試合にとどまりましたが、今シーズンはもっと増えそうですね」(在阪記者)

 ガンケルは、これまではボールカウントが先行した後の“甘いボール”を狙い打ちされていた。原口が配球を変えて立ち直らせたわけだが、好投の理由はそれだけではない。

「福原忍コーチのアドバイスにガンケルが驚いていました。下半身の体重移動、ひねり、リリースポイントなどについてアドバイスを受けたそうですが、『米球界時代は言われたことがなかった』と振り返っています。この短期間でうまく修正し、今回の好投につながりました」(前出・在阪記者)

 日本のプロ野球界で指導を受けた経験が、米球界に戻ってからの活躍につながった話も少なくない。ガンケルも日本で成功したいという思いがあるから、“謙虚”に福原コーチの助言に耳を傾けたのだろう。

 そんなガンケルの先発ローテーション入りがほぼ確実になったことで、「捕手・原口」も再注目されつつある。ガンケルの登板日は「正捕手の梅野を休ませて、原口」の選択もあり得るが、矢野燿大監督としては不本意な部分もあるかもしれない。“正捕手”を固定し、バッテリー間の配球はもちろん、試合中の守備の指示も任せたいと思っているのではないか。

「矢野監督は捕手出身なので、捕手がめまぐるしく代わることのマイナス面も知っています。好捕手が若いピッチャーを育て、チームを強くしていくとの考えから、巨人のように複数の捕手を交代制で起用することは考えていないはずです」(プロ野球解説者)

 近年のプロ野球を振り返ればわかる通り、強いチーム、優勝争いを繰り広げるチームには柱となる好捕手がいた。しかし、こんなマイナス面もある。正捕手が故障離脱したとき、チームが浮足立ってしまう。ガンケルが原口のリードによって好投をアピールできたことで、正捕手・梅野に何か起きた場合に備えることもできたというわけだ。

 オープン戦終盤から調子を崩していたガンケルが結果を出したこの試合は、今季の阪神を占ううえで大きな意義があったようだ。

(スポーツライター・飯山満)

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