去る3月29日に亡くなった志村けんさんが主役で出演予定だった山田洋次監督作品の映画「キネマの神様」が、沢田研二を代役に立てて制作されることになった。往年の志村さんと沢田研二の関係を知る世代にとってはこれ以上ない朗報だろう。
「志村けんさんといえば、本名の志村康徳(やすのり)ではなく『けん』の芸名を名乗ったのは実父の名からとったという話もあれば、俳優の高倉健さんに憧れていたからという説もあります。志村けんさんは役者のオファーが数多あったにもかかわらず、実際に出演した映画は『鉄道員』(1999年公開)くらい。あとはアニメ映画の吹き替えをした程度で、ドリフ時代の付き人時代に出演した映画には本名の『康徳』でクレジットされています」(芸能関係者)
そんな志村けんさんが「コロナで死んだと本人はわかってないと思う」と実兄に言わしめるほどの急逝を遂げ、「キネマの神様」の主役は宙に浮いてしまったのだが、去る5月16日、沢田研二を代役に制作されることが発表されたのだ。「8時だョ!全員集合」「ドリフ大爆笑」での2人の共演を知る世代にとって、これほどうれしいキャスティングはないかもしれない。
「志村けんさんと沢田研二のコンビといえば、鏡を使ったコントがあまりにも有名です。鏡の前に志村さんが立つと、その向こうに沢田が登場し、身振り手振りを一生懸命コピーするというもの。沢田が志村さんのアドリブの動きについていけなかったり、沢田がアンダーウェアを脱いでガッツポーズを決めたところで、爆笑が起きていましたね。また、当時の沢田はスーパースター。その沢田が付き人を演じ、志村さんが大スターの役を演じるコントも、それぞれの立場が逆転したようで、センセーショナルな笑いに拍車をかけていました」(お笑いライター)
さて、「キネマの神様」において、志村さんが演じるはずだった役柄は、家族に見放された無類のギャンブル好きな男性ゴウ。彼が愛してやまない「映画」をテーマに、若き日のゴウを菅田将暉、中年から晩年期を志村さんが演じ、時代を代表する監督やスターに囲まれながら夢を追い求めるというものだった。一方の沢田は山田洋次監督作品に出演歴がある。「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」(1982年公開)では二枚目ながらもシャイな難しい役(実像通りの印象もあるが)を好演し、デパートガール役で共演した田中裕子とはこのあと結婚している。長い交友があった志村さんの代役、妻との縁をとりもった映画の監督作となれば、沢田以外の代役は考えられないだろう。
今回、代役を務めるにあたって、沢田サイドから発表されたコメントは「志村さんの、お気持ちを抱き締め、やり遂げる覚悟です」というものだった。
「思い出されるのは2018年10月に起こったさいたまスーパーアリーナのドタキャン騒動。まだ細かい経緯については明かされていませんが、どうやら客の入りが悪いという理由で、開演直前で公演中止を発表。会場に訪れた大勢のファンをガッカリさせました。言い換えれば沢田自身が『話が違う』『不当だ』と感じたら仕事を投げ出してしまう人間であることを露呈したこととなりました。志村さんが演じるはずだった役どころは、厄介者であるにもかかわらず、いつしか観客の共感を得て、感動を届けていくという難しい役どころ。それだけに、沢田の『やり遂げる覚悟です』というコメントは、多くのファンに安心感を与えたのではないでしょうか」(前出・芸能関係者)
ここは志村さん追悼のために用意された絶好の機会。堅忍不抜の志でやり遂げてもらいたい。
(鷹太郎)