新型肺炎“治療現場”の壮絶「人工心肺はフル稼働」「患者1人に4人体制で」

 医療現場では今なお過酷な闘いが続いている。

 その背景には、200人以上の院内感染を起こした東京都台東区の永寿総合病院から、新型コロナの感染拡大があった。

 入院中の患者が治療継続のため、主治医が勤務する慶応病院に転院。この主治医をはじめとして、永寿総合病院の外来診察を担当していた99人の医師のうち、5人の感染が判明した。さらに転院患者が入院した病棟の職員や患者にも感染していたことがわかった。

 その後、永寿総合病院が閉鎖されると、下町エリアの住民が都立墨東病院の救急外来(ER)に殺到。新型肺炎疑いの患者が担ぎ込まれるたび、診療を一時中断して救急外来診療を続けたが、4月21日からERへの急患受け入れを休止した。その後、都立墨東病院内での感染者数は30人以上に達している。

 慶応病院と都立墨東病院など、他の病院を行き来する勤務医もいるため、新型肺炎ドミノは都内全域に波及。全ての大学病院、総合病院で手術の延期や、発熱患者の外来診療中止などの影響が出た。そして富山市民病院(富山)、神戸赤十字病院(兵庫)、福岡記念病院(福岡)など全国各地でもクラスターが発生している。

 慶応病院の感染も、転院患者や主治医から広がったとは限らないそうだ。同病院の女性職員が言う。

「院内感染が起きている病院からの転院患者の受け入れということで、感染対策に詳しいスタッフ、感染予防設備のある病棟に入院させて万全の対策を取ったはずでした。感染が拡大した時点では、マスクやガウンといった医療資材の量も今ほど悲惨ではなかった。専門病床は、他の病室に空気が流れ込まないよう、病室を陰圧に保つ装置や排気設備も整っています。そうした環境でも院内感染が起きました。東京都とは別に独自のPCR検査を感染の疑いのある患者と職員全員に行いましたが、無症状の感染者が見つかっています」

 そしてこの職員は震えながら、こう吐露した。

「普通に話していた患者が突然、息苦しさを訴えて意識を失う。そのまま人工呼吸器、人工心肺につながれ、アッという間に絶命していく。そんな経過を見ているので、いつ自分も陽性になり、急変するか。『私もあんなふうに突然、死ぬのかしら』と涙ぐむ同僚もいます。眠る前も仕事中も家族といる時も、死の恐怖が離れない‥‥」

 コロナ重症患者を抱える病院の集中治療室に勤務する医師もまた、こう声をしぼり出す。

「人工心肺、人工肺はもはやフル稼働に近づきつつあります」

 病院には人工呼吸器と人工心肺、人工肺を必要とする重体患者ばかりで、呼吸困難を訴える新たな患者を受け入れられない。その結果、埼玉県では自宅待機を余儀なくされた新型肺炎の50代男性が、自宅で急死。ようやく病院のベッドが空き、遺体が発見されたその日に入院する予定だった。

 新型コロナの流行後、ウイルス治療薬「アビガン」の他に注目されているのが、人工肺(エクモ)だ。これは医療ドラマで見るような、気管挿管されたチューブを人工呼吸器につなぐ治療とはわけが違う。

 患者の双方の鼻の穴には何本もの管が通され、両腕に点滴、そしてモニターが全身につけられる。さらに人工肺につないだ太い管を首の根本から心臓に刺した光景は、気の弱い人が見たら卒倒するほど壮絶だ。

「患者が長期装着に耐えられないうえに、管理が非常に難しい。人工心肺、人工肺を装着している重症患者の治療には最低でも医師1人、技師1〜2人、看護師2人がつきっきりになります。そんな患者が病棟に1人ならば交代してフォローできますが、今、全国の大病院の集中治療室にいるのは人工呼吸器や人工肺をつけた重体患者。集中治療室にもう空きはありません」

 米カリフォルニア州の民間研究所によれば、日本の新型ウイルスの遺伝子を解析すると、中国・武漢由来のウイルスだけでなく、イタリアやスペインで猛威を振るうヨーロッパ由来のものが混在するという。そして感染爆発、死と絶叫が渦巻く日本の医療は、崩壊カウントダウンに入っている。

 一都三県が打ち出した合同キャンペーンでは5月6日までの12日間を「いのちを守るSTAY HOME週間」と位置づけた。5月7日以降も、自らの命を守る行動を心がけてほしい。

ライフ