場当たり的、後手後手との批判が渦巻く安倍政権のコロナウイルス対策には、驚くべき「ブラックボックス」が存在した。国民の生活、生命を守るべき立場にある総理大臣があろうことか、蔓延終息を意図的に「妨害」。この暴挙に、厚労省幹部も怒り心頭なのである。
終わりの見えないコロナパニックに陥った日本列島。ここまで激震させた元凶は安倍晋三総理(65)の「暴走」にあると、厚労省の現職幹部は憤りを隠さない。
「北海道内で陽性患者が次々と出て、日本国内の新型コロナウイルスのフェーズが変わりましたが、安倍総理の頭の中のフェーズも変わりました。安倍総理が専門家の意見に耳を傾けないのは相変わらずですが、新型肺炎対策のブレーンだった大坪寛子厚労省大臣官房審議官(52)を見限ったのです。大坪審議官は安倍総理の腹心である和泉洋人首相補佐官(66)との不貞疑惑を『週刊文春』にスッパ抜かれた上に、武漢からのチャーター機、ダイヤモンドプリンセス号の船内感染と、初期対応で立て続けに躓いた。そして今や安倍総理は、新型コロナウイルス以上に制御不能。専門家会議や厚労省や文科省に事前調整もないまま記者発表をする。テレビ画面を通じ、我々担当省庁職員が何も知らされていない発表を知らされるたびに、ため息がもれます」
なぜ安倍総理が専門家の意見に耳を傾けず、暴走するのかは後述するとして、その弊害の最たるものが、信じがたいことに「新型肺炎の検査潰し」なのだ。
日本医師会(横倉義武会長)が行った緊急調査によれば「7つの道県の医師会から報告が寄せられ、医師が保健所に検査を依頼しても断られた不適切なケースが30件あった」という。横倉会長は、
「医師が検査が必要といっているのに、保健所が一方的に断るのは不具合」
と言い切っている。
「国際比較すると、日本の検査件数は圧倒的に少ない。韓国のPCR検査件数は3月初旬に4万件を超えましたが日本のPCR検査件数は同時期で比較しても1000件余り。ダイヤモンドプリンセス号の乗客で亡くなった日本人男性は発症から急激に悪化するまで船内に留め置かれ、亡くなる直前までPCR検査を受けることができませんでした」
こう指摘するのは、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長である。
海外に目を転じると、アメリカでは新型コロナ対策予算に9000億円を計上、米国疾病管理予防センター(CDC)では1回に800件の検査ができる検査キットの導入準備を進めている。この検査キットが完成すれば、米国では日本の2カ月間の検査総数と同規模のPCR検査をわずか数時間でこなせるようになる。片や日本政府は「軽症患者は病院に来るな。家で耐え忍べ」と戦時中さながらの非科学的な根性論を押し付けるばかりだ。
「日本でも検査件数を増やそうと思えば増やせます。新型コロナウイルスの遺伝子解析はとっくに終わっているので、PCR検査に必要な、人工的に作った新型コロナウイルスの遺伝子配列と、検査に必要な試薬は簡単に作れるのです。あとは実用化に向けて、新型コロナウイルスの臨床サンプルが必要となる。実際に感染した患者から採取したウイルスのサンプルを用いてPCR検査を試運転し、品質に問題がなければ実用化できるのですが、(新型肺炎の検査の中心にある)国立感染症研究所は試運転用の陽性患者のサンプルの配布を渋っていると、関西地方の企業から聞きました」(上理事長)
那須優子(医療ジャーナリスト)