プロ野球11球団を困惑させる「裁判スキャンダル」とは

 プロ野球界で多くの球団が信頼しているブランドが揺れている。裁判にまで発展した泥仕合の舞台裏を当事者が怒りの告発!

 結ばなくてもスポーツシューズが履ける、便利な靴紐が球界で重宝されている。ところが、その「結ばない靴紐」の特許権が裁判で争われる事態となっているのだ。コトの発端は、約10年前に遡る。

 当時、スポーツ用品や健康グッズの販売を手がける株式会社ツインズの梶原隆司代表取締役から、輸入などを手がける株式会社クールノットジャパンの長田真和代表取締役に、米国企業が製造していた「結ばない靴紐」と同等品の製造について打診があった。

「当初は米国企業が特許を持つ商品を製造する計画でしたが、ライセンス料が高額すぎて折り合いがつかなかった。そこで、うちとツインズ社に加えて、廉価に製造、梱包の発注ができる中国の縫製工場など計4社で米国企業の特許権に抵触しない同等品の共同開発に着手したんです。試行錯誤の末、12年に独自の新商品開発に成功しました」(長田氏)

 新商品の特許権は、共同開発した4社で取得。と同時に、販売をツインズ社、残り3社で製造を担う役割分担を明記する契約を交わしたという。

 その後、ツインズ社は「キャタピラン」と名付けて販売を開始。テレビ番組でも利便性のよさが取り上げられるなど一躍、大ヒット商品になる。その結果、販売先はスポーツ用品や靴の量販店の枠に収まらず、プロ野球界にまで広がっていった。

「アップシューズやスパイクに付けて自由に間隔を調整できる靴紐は、プロ選手の間でも評判を呼んでいる。中日を除く11球団がメーカー契約を結んでいるということです」(球界関係者)

 売れ行きが好調になると、梶原氏が生産サイドに毎月の生産数を10倍に増産するよう要求してきたという。見通しを信じた長田氏は約2億円の費用をかけて、設備投資や人員増員を敢行。だが、実際の注文数は見込みを大きく下回り、5分の1以下の数字だった。

 もちろん、見込み違いは起こりうることだが、その裏で梶原氏は長田氏ら生産サイドに裏切り行為を働いていたようだ。

「無断でツインズ社が日本の自社工場で製造を始めていたんです。役割分担の契約を反故にされた製造側の3社は怒り心頭になりました。なにより商品は中国の製造技術でできたものですからね」(長田氏)
 
16年に、生産サイドの代表として長田氏がツインズ社を東京地裁に提訴。特許権の剥奪を訴えるも、証拠不十分のために訴えは退けられる。判決に納得できない長田氏は知的財産高裁での控訴審に持ち込む。そこで18年の中間判決で製造側の主張が認められたのだ。

「今も裁判は続いていますが、こちら側の主張を前提に、損害賠償額や販売差し止めについての判決が下される予定です」(長田氏)

 現在、結ばない靴紐は「COOLKNOT」と商品名を変えて、長田氏みずから販売している。一方、「キャタピラン」も一部の店頭に並んでいるという。ツインズ社の梶原氏に本件について問うたが、

「まだ、裁判係争中なので、発言は控えさせていただきたい。全てが決まってからお話しします」

 と言葉少なげにコメントするのみだった。関係を結び直すことは難しそうだ。

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