有吉弘行、後輩を「ゴミ芸人」として大ブレイクさせた手腕とやさしさ

 かつては“クズ”扱いされていた売れない芸人が、“ゴミ”で天下を獲った——そんなウソのような話を実現させたのは、漫才師のマシンガンズ・滝沢秀一だ。

 芸人でありながら、妻子を養うために始めた清掃員の日常を綴ったエッセイ「このゴミは収集できません〜ゴミ清掃員が見たあり得ない光景〜」(白夜書房)が18年、まさかの大ヒット。今年、「ゴミ清掃員の日常」として漫画化されると、これもベストセラーとなった。
 
 マシンガンズといえば、腹が立つ女性の言動をあげつらって、その名の通りマシンガントークでツッコんでいく漫才スタイル。叫んで漫才を終わったり、「MAXめんどくせぇ」などの決めゼリフを使ったこともあったが、どれもパッとせず。「THE MANZAI 2014〜年間最強漫才師決定トーナメント!栄光の決勝大会〜」にて、認定漫才師50組に選ばれた際は売れるチャンスをつかんだように思われたが、波に乗れなかった。

 相方の西堀亮は16年、嵐・大野智の主演ドラマ「世界一難しい恋」(日本テレビ系)に起用されたのを機に、翌17年には「ラブホの上野さん」(フジテレビ系)、「母になる」(日テレ系)で俳優としても活動している。

 一方の滝沢は12年に、妻の友紀さんの妊娠・出産を機に清掃会社に正社員として就職。その体験や、ゴミから世相を見る芸人独自の切り口をTwitterでつぶやいていると、太田プロダクションの先輩である有吉弘行の目に止まった。

「『雨の日のダンボールは重い』などとつぶやかれる滝沢のTwitterを、日本人フォロワー数ナンバーワンの有吉がリツイートしたのです。その後も有吉がリツートを重ねてくれたことで評判が広がり、1カ月後には出版社から書籍化の依頼が来たそうです」(エンタメ誌ライター)

 最初は〈ゴミ清掃員あるある〉で始めたTwitterタイトルも、「“あるある”っていうのはちょっと弱いな。なんかオリジナルのタイトル考えろよ」という有吉のアドバイスで変更。本のタイトルが長くなったが、これも成功した理由かもしれない。

 滝沢は書籍刊行の際、710万人以上のフォロワーを抱える有吉に帯文を書いてもらうよう依頼した。しかし、事務所の先輩・後輩感が浮き出てしまうことを理由に拒否。最終的には、ラジオで絶賛してくれた伊集院光に頼んでいる。

 昨年2月に4媒体で連載開始された漫画「ゴミ清掃員の日常」は、5月にはコミックとして発売。またたくまに重版が決定。出版不況のおり5刷まで伸びた。いまでは「ゴミトーーク!」なるライブも行っている。

 ゴミの恩恵で家族は4人に増え、今ではすっかりホクホク状態。太田プロとしては、劇団ひとりに続くベストセラー芸人だけに、崖っぷちから再生させた有吉弘行に感謝していることだろう。

(北村ともこ)

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