アメリカのプライベートエクイティー(未公開株)投資会社のシルバーレイク・マネジメントが、11月27日に、英国プレミア・リーグのマンチェスター・シティを運営するシティ・フットボール・グループ(CFG)の株式を10%取得することを発表、話題となっている。
というのも、シルバーレイクが取得した金額が5億ドル(約550億円)で、つまりシティは単純計算すればその10倍の5500億円近い価値があると評価されたことになるからだ。
「これはプロスポーツ・チームでは最も価値のあるチームの1つと評価されたことになります。あのベッカムが在籍して日本でもなじみが深いマンチェスター・ユナイテッドのニューヨーク市場での時価総額が30億ドル(約3300億円)ですから極めて高い評価と言えるでしょう」(スポーツライター)
シルバーレイクは中国のアリババやテスラ、デルなどのテック企業への投資で知られる。最近はエンタメ業界にも投資の幅を広げ、マディソン・スクエア・ガーデンやアメリカの総合格闘技のUFCの株式も握るなど、今後はこの方面への投資が増えると見られている。狙いとしてはテックとエンタメの融合で、試合はもちろん、選手インタビューやドキュメンタリー、会見模様など、ファンが見たい映像のストリーミング配信のような、テック活用のサービス展開にビジネスを広げていくことが予想される。
だが、今回の出資を懸念する向きもないことはない。
「CFGはアラブ首長国連邦(UAE)の王族が経営権を握っている石油マネーをバックにした企業です。そういうこともあって、投資先は世界中にわたり、ニューヨーク・シティ(アメリカ)、アトレティコ・トルケ(ウルグアイ)、ジローナ(スペイン)といったクラブチームでも数字の大小はあれ、経営権を握っています。横浜F・マリノスにもCFGマネーが入っています。一方で、UAEは政府に批判的な人々を投獄して拷問したり、移住労働者は過酷な扱いを受け、中東の国ですから女性の自由が制限されているなど、国際的に人権問題で多くの批判がある国です。そういった国の王族企業が有名チームを購入したことにはもともと、『人権問題を糊塗するイメージアップ』との反発の声もありました」(同前)
だから今回の資本参加も、石油マネーと投資マネーが手を組んだ、マネー資本主義の横行と見られかねないというのだ。確かに、スポーツとマネーはなかなかなじみいくい。
(猫間滋)