健康宅配チェックシート〈睡眠時無呼吸症候群〉花粉症シーズンは災いしかない!

 ずいぶん前から、寝ても疲れが取れない気がする。日中に急襲する耐え難い眠気。その原因はランチ休憩後の血糖値の上昇だけでなく、睡眠中の〝悪癖〟にもあるのかもしれないのだ。特に花粉症シーズンは重症化してしまうようで…。

 イビキをかきながら寝る人は、知らぬ間に「SAS(睡眠時無呼吸症候群)」を発症している可能性が高い。京都市右京区にある「なか整形外科」の樋口直彦院長が解説する。

「睡眠中に呼吸が10秒以上止まる状態が、1時間あたり5回以上、あるいは7時間睡眠で30回以上あると『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』と診断されます。胸部や腹部の呼吸運動が行われているのに、何かしらの原因で気道が塞がって、鼻や口による呼吸が止まっているのです。大半のケースで大きなイビキを伴います。成人男性の約20%、閉経後女性の約10%が発症していると言われています」

 とはいえ、自分が眠っている姿を俯瞰して見られる人はいない。たとえイビキをかいている自覚がなくても、寝起きがすっきりしなかったり、日中に睡魔と格闘したりするのが常ならば、就寝中に体内の酸素が不足していることにほかならないのだ。

「呼吸が止まる状態が繰り返されると、血中に取り込まれる酸素の量が減ってしまいます。すると、脳が酸素を得ようとして血流を活発化させ、血圧上昇を引き起こす。高血圧は睡眠の大敵で、眠りが浅くなってしまいます。長時間寝ようが、疲労感が抜けないまま朝を迎えることになるのです。その状態で車でも運転しようものなら危険極まりないです」

 イビキと相関関係があるだけに、気道が狭くなりがちな肥満特有の疾患だと思ったら大間違い。瘦せていても「対岸の火事」では済まされないケースもあるようで、

「いわゆる小顔の人はリスクが高い。というのも、下顎が小さいと喉周辺のスペースも狭いので、仰向けになると舌の根っこが喉に落ち込んでしまって気道が塞がりやすい。もっと言えば、口や喉周りに脂肪がついてしまうと、さらに気道は狭くなってしまいます。舌が長く大きい人も同様です。鏡で口の中をのぞいた時に、一般に〝のどちんこ〟と呼ばれる『口蓋垂』が見えない人は舌のサイズが大きい部類だと思ったほうがいいでしょう」

 喉の奥にあるリンパ組織にあたる「扁桃腺」が大きい場合も同じ。

「本来、細菌やウイルスの体内への侵入を防ぐ役割を持ちます。幼少期に病原体に感染して肥大化してしまうことは少なくありませんが、時間が経てば元の大きさに戻っていきます。ところが、慢性的な扁桃腺炎などを繰り返すことで、病的に肥大化してしまうケースもあります。舌と同様に気道が塞がる要因となり、SASを引き起こすリスクを高めてしまうのです。ちなみに、遺伝や体質によって生まれながら扁桃腺が大きい人もいます」

 節制をして健康的なスタイルをキープしていようが関係ない。生来の骨格や体質によって、酸素の通り道が狭い人も一定数いるのだ。

 アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの鼻炎もリスク要因になりうる。

「鼻が詰まった状態になると、口呼吸をせざるを得なくなります。常に空気が循環している鼻腔と違って、口からの呼吸は舌などによって空気の通り道が確保できないケースがあります。イビキをかく人の約75%に鼻詰まりの症状があると言われています」

 当然ながら、花粉シーズンの到来は災いしか呼ばないようで、

「花粉症の人はアレルギー症状で鼻腔が腫れてしまいます。鼻からの空気の通り道が狭くなるだけに、酸素の吸入も滞ってしまう。諸説ありますが、一般的に花粉症の症状は昼よりも夜のほうが重くなる傾向が強いといいます。と同時に、寝ている間に夕方頃に服用した薬の効果も薄れてしまう。目のかゆみも相まって、睡眠の質は著しく下がるでしょう」

 睡眠中に訪れる、無呼吸タイムがただちに生命を脅かすものではない。しかしながら放置したまま過ごしてしまうと、重篤な疾患まで引き起こしかねないのである。

「体内に酸素が不足しているので、心臓が過剰に働いて不足分を補おうとするのです。血管にダメージが蓄積されて、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めてしまいます。血管の内壁が傷ついてしまうと、コレステロールも溜まりやすくなる。また糖尿病との合併率も、重症になるほど上昇することもわかっています」

 対症療法として装置を用いた治療がメインとなる。

「中等症から重症の標準治療として広く用いられているのが『CPAP(持続陽圧呼吸療法)』です。機械で圧力をかけた空気を鼻から気道に送り込み、気道を広げることで睡眠中の呼吸を補助します。20センチ大の機械、空気を送るチューブ、鼻に当てるマスクを使用するので、いささか大げさに見えてしまうかもしれませんが、SASの患者さんが使用すると症状が大きく改善される症例も多い。減量によって使用する必要がなくなるケースこそありますが、基本的には生涯にわたって使用する必要があります」

 もう1つは「口腔内装置」によるもの。上下顎の歯列にマウスピースを装着して、下顎を前方にズラすことで気道を広げる効果に期待できるのだ。

「肥満の度合いが軽度なのが条件の1つ。歯が残っていなかったり、鼻呼吸ができなかったりする場合は推奨できませんが、個々の歯型に合わせたオーダーメイドが可能な治療法です。こちらも効果を持続させるためには、生涯にわたって使用する必要があります」

 酸素の供給不足は体にとって死活問題。QOLを向上させるためにも、医療の力を借りることを検討してみてはいかがだろうか。

【「睡眠時無呼吸症候群」チェックシート⑪】

セルフチェックで8点以上は近くの医療機関へGO!

①夜中によくトイレで目が覚める 1点
②毎晩のように夢を見てしまう 1点
③10代と比べると太った気がする 1点
④小顔あるいは顎が小さい自覚がある(二重顎が気になる)1点
⑤座って新聞や本を読んでいるとウトウトしてしまう 1点
⑥鏡でのどちんこ(口蓋垂)が見えない 1点
⑦8時間以上寝ても疲れが取れない 1点
⑧扁桃腺が肥大化していると診断されたことがある 1点
⑨大きなイビキをかいていると自覚あるいは指摘された 3点
⑩睡眠中に呼吸が止まっていると指摘されたことがある 3点
⑪日中に睡魔に襲われて仕事がままならない 3点

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