12月6日に急逝した歌手で女優の中山美穂さん。10代のころから数多くの映画・ドラマに出演してきたが、なかでも海外で特に高い評価を受けていたのが1995年公開の主演映画「Love Letter」だ。
同作は「スワロウテイル」(96年)などで知られる岩井俊二氏が監督・脚本を担当。冬の北海道・小樽を舞台に中山さんは1人2役を演じ、ブルーリボン賞の主演女優賞を受賞。海外でも公開され、韓国や台湾では大ヒットするなど外国人のファンも多い作品だ。
メディアで中山さんが亡くなったことが広く報じられると、小樽市内の映画ゆかりの場所に聖地巡礼に訪れるファンが急増。中山さん演じるヒロインの職場という設定だった図書館は、実際には国の重要文化財に指定されている旧日本郵船小樽支店。1906年完成の石造りの洋館でもともと観光名所のひとつだったが、改めて注目を浴びた格好だ。
現地で台湾から家族旅行で訪れたという女性に話を聞いたが、日本に来る直前にネットニュースで今回の訃報を知ったとのこと。「Love Letter」は夫との恋人時代に観た思い入れのある作品で、「予定を変更して映画に登場した場所に来ようと思ったんです」と話す。
他にも夜景スポットとしても有名な天狗山スキー場、定番の小樽運河、坂の町・小樽で勾配が特にキツい舟見坂も、作品ゆかりの聖地として有名。運河と友人と散策していた韓国から来た女性は「母がすごく好きな作品で、私もハマりました。亡くなったのは残念だけど、映画と同じ雪の季節に来られてよかった」と語っていた。
来年は日本での劇場公開から30周年の節目を迎える。岩井監督は訃報を受けて、《雪のあるうちに一緒に小樽に聖地巡礼しようと約束していた》とXに投稿。もし実現していれば、動画などで公開されていた可能性も高い。
「Love Letterは冬の小樽の情景とストーリーが絶妙なバランスで描かれた名作。それまでコメディ作品が多く、活発な女性を演じてきた中山さんにとっては、等身大の女性を演じることで女優としての新境地を開きました。本人とってもとりわけ思い入れのあった作品だったと聞いています」(映画ライター)
この冬は映画を見て故人を偲び、北海道旅行で小樽の聖地巡礼…そんな過ごし方もいいかもしれない。