ロシアと蜜月関係にある北朝鮮がついにウクライナ戦争に〝参戦〟。戦地に送り込んだ「サバイバル兵士」の不気味な正体と実力を探ってみると─。
ロシアがウクライナに軍事侵攻してから、11月20日で1000日を迎える。終戦の兆しも見えない中、韓国の情報機関・国家情報院は、北朝鮮が12月までに約1万2000人の派兵を決めたと報告した。
米国のホワイトハウスも、すでに3000人の兵士がロシア東部訓練所3カ所で基本戦闘訓練を受けていることを把握し、
「ウクライナ軍と戦闘を行う可能性が非常に高い」
と、警戒している。
これまで北朝鮮はベトナム戦争や第4次中東戦争に小規模の空軍部隊を派兵しているが、1万人超の大規模な地上軍の海外派遣は前例がなかった。
北朝鮮のロシアへの派兵の狙いについて、軍事ジャーナリストの村上和巳氏はこう説明する。
「朝鮮人民軍は常に韓国や在韓米軍と対峙していますが、1950年に勃発した朝鮮戦争以来、本格的な実戦経験はありません。ロシアによる軍事進攻に参戦すれば、ウクライナ軍は欧米から提供された最新鋭の武器で戦っているので、シミュレーションしながら現代戦を経験できます。自分たちで燃料を消費せずに実戦経験を積めるだけではなく、恐らく見返りとして核・ミサイル技術の提供や、ロシア産の原油、食料を得るでしょう」
これまで北朝鮮はロシアに砲弾、ミサイル、対戦車ロケット砲などを提供している。しかし、ウクライナ攻撃に使用した北朝鮮製のミサイルは、標的に届く前に不具合で空中分解するケースも頻繁に発生。戦地で兵器の実戦データを収集し、改良の参考にすると見られている。
一方、ロシアの兵士不足も深刻だ。英国防省は9月17日に、2年半に及ぶ軍事侵攻で、ロシア側の死傷者数は約60万人とする推計を発表。そのために、北朝鮮の兵士を投入して人員補充をはかるのが狙いだという。10月25日には、ウクライナ軍が侵攻したロシア西部のクルスク州に到着したと報じられているが、
「8月6日に越境攻撃を受けて占領されて以来、いまだに奪還できていません。本来であれば、国土の占領は面子にかかわるので、すぐに取り戻したいはずですが、配備できるロシア兵が足りないのは明らか。そこに朝鮮人民軍を送るなら効果的だし、ロシア領なので犠牲者が出た場合に遺体をすぐに回収し、痕跡を消すこともできます」(村上氏)
北朝鮮が参戦すれば、西側諸国がウクライナへの関与を強める可能性が高くなるため、ロシア軍服を着用。北朝鮮人に顔立ちが似ている地域のIDを受け取り、カモフラージュしていた。
さらに、村上氏が「膠着した状態が続いている中、朝鮮人民軍がゲームチェンジャーとして戦局を大きく変える可能性がある」と指摘するように、金正恩朝鮮労働党総書記(40)が自信を持って送り出した特殊部隊は、「暴風軍団」として恐れられているのだ。
(つづく)