【北朝鮮】金正恩がプーチンに泣きつく中国の“ジワジワ兵糧攻め”その先にある最悪の事態

 近年、中国と北朝鮮の関係が冷え込んでいるとは言われていたものの、こうした報道が事実であれば、相当のっぴきならない事態に発展している可能性は否定できないだろう。

 10月1日、韓国紙「中央日報」が、今年に入り中国がこれまで北朝鮮に輸出していた米やトウモロコシ、肥料などの穀物や農業物資を昨年比で最大98.3%まで減らしていた、と報じた。記事によれば、北朝鮮は今年1~8月、中国から米746万ドル(約10億7480万円)分を輸入したが、これは昨年同期の輸入額6582万ドルのわずか11.3%に過ぎないというのだ。

「同紙が入手した中国海関総署の統計によれば、米のほか、トウモロコシは97.7%、複合肥料も81.5%の減。特に窒素肥料は、前年同期の158万ドルから何と98.9%減の1万7596ドルまで落ち込んでいる。実はこの傾向は、昨年9月の金正恩総書記によるロシアへの電撃訪問前から徐々に進んでいたようです」(北朝鮮ウォッチャー)

 北朝鮮にとって、米やトウモロコシなどの穀物や農業物資が生命線であることは言うまでもない。しかも貿易の90%以上を中国に依存してきたことは周知の事実。そんな生命線である穀物などの輸出が大幅減少している理由はなんなのか。

「もちろん、背景には北朝鮮とロシアとの蜜月ぶりがあることは間違いない。ロシア税関当局の資料によれば、ロシアが今年1月からこの数カ月で北朝鮮に輸出したトウモロコシは1000トン。小麦粉にいたっては1270トンもあり、それ以外にも北朝鮮は相当量の穀物や農業物資をロシアから輸入した形跡が明らかになっています」(同)

 だからといって、北朝鮮がいきなり貿易のすべてをロシアに乗り換えるなどということは、物理的に見ても不可能だ。そのため確かに一部は極端な減少傾向にあるものの、朝中貿易全体を通してみる限り、まだ一定の水準は維持しているという。とはいえ、この先この水準がどう変化していくかは3国間の行方にかかっているわけだ。

「中国建国75周年記念レセプションしかり、平壌で開かれた北朝鮮政権樹立76周年記念行事しかり、これまでなら党の重要ポジションにある幹部が出席していましたが、今年は両国ともに“格落ち”の派遣で済ませています。そんなこともあり、中国側が北朝鮮の締め付けに乗り出し始めたということなのでしょうが、そもそも中国としては国連制裁を受け外貨を持たない北朝鮮と積極的に貿易しても大きなメリットはなく、貿易正常化を急ぐ必要はないんです。一方の北朝鮮は米や肥料が入ってこなくなれば死活問題で、中国から袖にされればされるほどロシアに頼るしかなくなる。皮肉なことに、中国の締め付けにより朝ロ関係がより親密さを増すことは間違いありません」(同)

 さらに中国としては、仮に11月の米大統領選挙でトランプ前大統領が当選した場合、2018年のような北朝鮮による抜け駆け接近の懸念もあるだろう。様々な思惑が入り乱れる中、しばらくは中国の北朝鮮に対する締め付けは続くことになりそうだ。

(灯倫太郎)