海外で働きながら語学を学べることから、若者の間で人気のワーキングホリデー。日本が専用ビザ発給の協定を結んでいるのは29カ国で、中でも一番の人気国はオーストラリアだ。
同国は発給枠の上限が設定されていないので、定員に達したためにビザが取れない、ということがなく、また、日本人にとって比較的住みやすい環境であることも大きい。だが、最大の魅力は「賃金の高さ」だという。
「オーストラリアでは、最低賃金がこの7月から時給23.23豪ドル(約2488円)から24.10豪ドル(2581円)に上がり、2500円の壁を突破しました。これは日本で最も高い東京都の最低賃金1113円のおよそ2.3倍です」(留学斡旋会社幹部)
オーストラリア内務省の発表によると、22年7月から23年6月の日本人ワーホリビザの発給者数は過去最多となる1万4398件で、24年6月までの1年間はさらに増加する見込み。だが、新たな問題も起こっているという。それが「ワーホリ無職者」の急増だ。
「オーストラリアは世界中からワーホリの若者を受け入れていますが、どの国の入国者も増加しており、求人枠を奪い合う状況が起きているんです。レストランの厨房スタッフでも1名の募集に数十名が応募する事態となっており、仕事が見つからずに途中で帰国するケースも増えています」(前出・幹部)
現地で飲食店を経営する日本人も、「23年になってから一気に増え始めた」と話す。この店主が続ける。
「メディアの影響が大きい気がします。ネットやテレビで『日本より稼げる!』とあおり、ウチで働くスタッフの中にも出稼ぎ感覚で来ているコは多い。ただ、この1年で職探しはかなり大変になったし、そもそも英語がロクに話せない日本人が就ける仕事は限られる。私は就職氷河期だった90年代後半に就活を経験していますが、体感的にあの時に近い状況が起きていますね」
そもそもワーキングホリデー制度における就労とは、滞在期間中の資金を補うための付随的な労働を認めているにすぎない。オーストラリアなら手っ取り早く稼げるという安易な考えは捨てたほうがよさそうだ。