政府・日銀の為替介入でも止まらぬ異常円安に加え、6月より「加工品」など食品614品目が値上げ、補助金終了により電気料金も段階的に引き上げとなる。高値ラッシュでアップアップの庶民生活に、この期に及んでスズメの涙の「定額減税」で「デフレ脱却」とか言い出したすっとこ総理には頼れない。虎の子老後資金を稼ぐ術を開陳する。
「老後の資金は4000万円が必要」
5月中旬、朝のニュース番組が取り上げると、SNSを中心に巷はザワザワ。「おいおい、2000万円じゃなかったのかよ」とツッコミたくもなるが、いつから4000万円も必要になったのか、という怨嗟の声だ。
そもそも老後に2000万円が必要とされたのは、19年に金融庁のワーキンググループが出した報告書が始まりだった。無職の高齢夫婦の平均的な収支を見ると、主に年金などによる約20万円の月収に対し、支出は約26万円と、5万5000円ほど足りない。そこで不足分を補うには、取り崩す資産が20年で約1300万円、30年だと約2000万円が必要だという計算だった。
ところが、現在は物価高。23年度の消費者物価指数が約3.0%の上昇なので、仮に3.5%の物価上昇が続くとした場合、老後の30年で、10年後に2800万円、20年後でおおよそ4000万円が必要になるというのだ。
明治安田生命が「老後資金4000万円」問題を解説した漫画ではこうなる。
高齢女性のゆとりある生活に必要な生活費約36万円から、年金の平均受給額22万円を差し引いた14万円を、女性の平均年齢88歳から65歳の引退年齢を差し引いた23年で掛けると、約3900万円ナリ。やはり4000万円が浮上するのである。
今更どうしてくれるんだ、とやり場のない怒りに襲われるが、「4000万円という額に脅かされずに、冷静に現状を見た方がいい」と落ち着くよう呼びかけるのが、経済評論家の荻原博子氏だ。
「まず前提として、3.5%の物価上昇が20年も30年も続くというのが机上の空論です。その間、リーマン・ショックのような経済危機が生じないとも限りません。この4000万円問題は、主に金融機関が盛んに唱えており、だからこそ投資して増やせという。それに乗せられて失敗したら、一体誰が責任を取ってくれるのかと言いたい。それよりは無駄な消費をやめた方がよほどマシです」
折しも、日本は超円安&値上げラッシュ、今日明日の生活さえ不安、ましてや老後生活など一寸先は闇なのだ。
年金制度は5年に1度見直されるが、来る25年がその年。今まさに、厚労省では来年の関連法改正に向けて、将来の年金水準を見通すための「財政検証」を行っている。そこでは5項目が検討事項として示されている。具体的には、国民年金保険料を現行の60歳までから65歳までの納付期間とする「5年間延長」や、パート主婦などの短時間労働者までを対象とする、厚生年金の加入拡大、高齢になっても働く人への在職老齢年金制度の見直しなどだ。
中でも納付期間延長では、現行制度に比べて年金支給額は増えるが、新たな財源も必要になってくる。さらには厚生年金の加入拡大も、保険料は労使折半なので、中小・零細企業にとっては厳しくなる。となれば雇用にも悪影響を及ぼすこと必至だ。パート主婦の場合は、いわゆる「年収の壁」問題で語られる優遇から外れることになる。結果、いくら政府が「100年安心」などスローガンを打ち出しても絵空事としか思えないわけだ。
5月23日に開かれた、経済財政諮問会議では民間議員が「高齢者の定義を5歳延ばして70歳にすべき」と提言し、大きな波紋を呼ぶ始末。
政府の魂胆は「70歳まで働け」だろう。
(つづく)