年金だけでも楽々暮らせるベスト5冊(1)「付加年金」で受給額増し!

「老後資金2000万円必要」とした金融庁・金融審議会の報告書が大パニックを呼んだ。本当に2000万円も必要なのか。「誰でも年金だけで悠々自適な老後を送ることができる」と指摘する経済ジャーナリストの荻原博子氏が、年金システムが破綻しない理由、社会保障制度の活用、投資の有無、そして、年金だけで豊かに暮らす生き方など、えりすぐりの5冊を紹介。これを読んで「年金生活」の新常識を勉強しよう。

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 落ち着きましょう。金融庁・金融審議会報告書のデータは、総務省の家計調査(2017年)をもとにしたものです。これによると、夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯の場合、支給される年金額を平均すると約20万9198円になります。支出の平均値は26万3718円で、毎月約5.5万円足りなくなります。この不足分を貯金を取り崩して埋めるとすると、仮に95歳まで生きた場合は、5.5×12 ×30で約2000万円が必要になるというものです。

 でも、慌てる必要はありません。私が「年金だけでも暮らせます 決定版・老後資産の守り方」(PHP新書)に書いたように、現在の高齢者の半数以上は、年金だけでなんとか暮らしています。不安におびえたり、ましてや「今すぐ行動しなければ」と証券会社に飛び込むほうが危険です。

 国が破綻しないかぎり、年金は破綻しません。確かに年金加入者に支払いを約束しているお金は総額で1000兆円以上。それに対して、積み立ててあるお金は160兆円しかありません。これだけ見ると破綻状態です。しかし、破綻しません。理由は3つあります。

【1】年金を支給するのは65歳以上ですから、ただちに1000兆円全額が必要になるわけではありません。

【2】破綻しそうになったら、政府が助けて年金を守ります。現に、2009年から老齢基礎年金の国庫負担割合を3分の1から2分の1へと引き上げました。年金財政がさらに悪化すれば、国庫負担をもっと増やすでしょう。

【3】政府はあらゆるテクニックを駆使します。保険料を上げる、給付額を減らす、支給開始年齢を引き上げる、年金加入者を増やす。これらは、すでに使われています。例えば、厚生年金の支給開始年齢について見ると、1956年以前は55歳でしたが、現在は65歳になっていますし、70歳でという話も聞こえています。加入者を増やすために、パートでも保険料を支払わなければならなくなる条件を下げてきています。

 このように、国はあらゆる手段を使って年金制度を守ろうとしています。なぜなら、年金が破綻すると国家が破綻してしまうからです。

 年金は破綻しないけれど、支給額は減っていきます。ですから、年金制度やさまざまな社会保障制度についてよく知り、フル活用して家計の出費を減らしましょう。

 この著書でも詳しく書いてありますが、「年金まとめ払い」や国民年金の「付加年金」など裏ワザを使うと受給額を増やせます。

 病気になったらどうしよう、介護にはいくらかかるんだろう。そんな不安を抱えている人も多いでしょう。でも、医療費には「高額療養費制度」、介護には「介護保険」があります。所得が少ない人は負担も少なくて済むようになっています。こうした制度を知っていれば、高い保険料を払って生命保険に入る必要もありません。

 いよいよ困窮した時は、「生活保護を受ける」という選択肢もあります。生活保護は国民の権利であり、国民を守ることは政府の義務です。これまでどっさり税金を払ってきたのですから、胸を張って生活保護を受けましょう。

 銀行や保険会社の言葉を信じてはいけません。彼らは「このままでは老後の資金が足りなくなります。手持ちのお金を運用して資産形成しましょう」と甘い言葉で誘ってきます。でもそれは、客のことを考えてではなく、商品を売るためのセールストーク。最近も、「かんぽ生命不正問題」で、郵便局員がかんぽ保険の営業ノルマのために、利用者に不利な契約をしていたことが明るみに出ました。

 しかし、いちばん重要なのは意識を変えて、年金だけで暮らす方法を考えること。そうすれば少ないお金で豊かに暮らすことができます。

選書1:年金だけでも暮らせます 決定版・老後資産の守り方/荻原博子・著/PHP新書/864円

荻原博子(おぎわら・ひろこ)/経済ジャーナリスト。明治大学を卒業後、経済事務所勤務を経て1982年に独立。不動産の下落、デフレの長期化を早くから予測するなど経済観には定評がある。家計経済のパイオニアとしてテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などで活躍中。近著に「荻原博子の貯まる家計」「役所は教えてくれない定年前後『お金』の裏ワザ」。

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