昨年4月15日に開園40周年を迎えた東京ディズニーリゾートは、23年9月の中間決算で売上高、純利益ともに過去最高を記録。ポスト・コロナのインバウンド増も追い風となって、根強い人気を示して好調だ。
一方、本国の米ウォルト・ディズニーが4月3日に開催した株主総会は、現経営陣と、いわゆる「物言う株主」のアクティビストが真っ向から対立。株主対策で5000億円もの札束が飛び交うという「夢の国」どころではない、株主資本主義の生々しい委任状争奪合戦が展開された。
「ここ数年、ディズニー映画は19年11月公開の『アナと雪の女王2』以来、興行収入100億円を超えた作品がなく、映画界では“ディズニー離れ”が進んでいました。一方、同じ11月にスタートさせた動画配信の『Disney+』に巨額の投資を行いましたが、アマゾンプライムやNetflixとの激しい会員獲得合戦もあって、赤字続き。そうした会社の不振を受け、22年11月には、20年までCEOだったボブ・アイガーを復帰させて再建を図るなど、会社は迷走を続けました」(経済ジャーナリスト)
そんな惨状に手をこまねいていられなかったのが、物言う株主のアクティビストだ。ネルソン・ペルツ率いる投資ファンドのトライアン・パートナーズやブラックウェルズ・キャピタルから、テーマパーク・ホテル不動産事業の分離や、スポーツ(配信)・娯楽・リゾートの分野別に会社を分割するなど、大胆な会社の改革を要求された。
対する再登板のアイガーCEOは、ディズニーの組織形態を残すべく、アクティビストに反発。代わりに、米ゲーム大手のエピックゲームズに15億ドル(約2225億円)を出資したり、新たなスポーツ配信を始めるなど、既存の形を守りつつも新たな攻めの姿勢でこれに対抗してきた。そして決着の舞台となったのが、3日の総会だった。
「トライアンらアクティビストは独自の取締役の選任を要求し、会社側の取締役候補と対立、より多くの株主の賛同を集めるプロキシファイト(委任状争奪戦)に発展。熾烈を極めたその争いは『米国史上最大』とまで報じられました。というのも、会社はアクティビストを攻撃するネガティブキャンペーン広告に4000万ドル(約60億円)以上を出費。さらに株主の賛同を取り付けるために昨年11月には復配を約束。2月には30億ドル(約4553億円)の自社株買いを発表し、合計5000億円以上もの巨費をアクティビスト対策につぎ込んだわけですからね」(同)
その過程では、7000人の人員削減という犠牲も生んだ。結局、会社側は勝利したのだが、とはいえ激しい消耗戦を強いられたのは事実。ディズニー映画ファンとしては新たなコンテンツに期待したいところだが、ヒットを生む土壌はやせてしまったかもしれない。
(猫間滋)