専門家が警告!千葉東方沖地震で「8メートル級巨大津波」が襲来する(1)「夫婦岩」崩壊の不気味

 元日に襲った能登半島地震の恐怖がいまだ冷めやらぬ中、今度は千葉県東方沖で群発地震が発生。しかも聞き慣れない「スロースリップ」と呼ばれる現象が誘発しているという。政府の地震調査委員会では「震度5弱」の警戒を呼びかけているが、それをはるかに上回る大地震と巨大津波の襲来を警告する専門家もいる‥‥。

 巨大地震の前触れなのか。千葉県東方沖(房総半島)などを震源とした地震が立て続けに発生している。

 2月27日から3月9日までのたった12日間で計41回。うち、震度4の揺れが3日連続で観測された。

 この不気味な地震活動に政府の地震調査委員会は臨時会議を開き、房総半島沖で「スロースリップ」と呼ばれる現象が観測されたことを報告。

「今後も震度5弱程度の強い揺れが起きる可能性がある」

 そう注意を呼びかけた。

 では一体、スロースリップとは何なのか。地球物理学者で武蔵野学院大学の島村英紀特任教授はこう解説する。

「陸のプレート(岩板)と、その下に沈み込んでいる海のプレートが、地中の境界面でゆっくりとずれ動く現象を『スロースリップ』と呼んでいます」

 陸のプレートが引きずり込まれると、境界面に〝ひずみ〟が蓄積されていく。普通の地震は、断層が1秒間に1メートル程度と高速でずれて一気に跳ね上がるが、スロースリップの場合はひずみが限界に達した時にゆっくりと跳ね上がるという。そのため、

「人は揺れを感じないし、津波も生じません。周期が非常に長いという特徴があるため、境界面は数日から数年かけて動きます」(島村教授)

 今回のケースは、房総半島沖の深さ20キロ~30キロの地点で起きているが、地震調査委員会は2月28日までの3日間で、最大約2センチのスロースリップが発生したと説明している。

 厄介なのは、何度も起きるその小さなズレが誘発して、大きな地震を引き起こすことにある。

 ちょうど発生から13年を迎えた、あの東日本大震災の前にも発生していたと指摘するのは、地震前兆研究家の百瀬直也氏だ。

「東日本大震災の時には、2カ月前に宮城県沖で起きていたし、3月9日にマグニチュード(以下、M)7.3の前震の後にもスロースリップが発生しています。このことが少しでも早く報じられていれば、警戒できたかもしれません」

 必ずしも、スロースリップが巨大地震を誘発するという因果関係は解明されていないが、一つの目安として「サイン」になると考えてもいいだろう。

 特に、千葉県東方沖はもともと地震活動の多い場所である。近年では、96年、02年、07年、11年、14年、18年にM5前後の地震が活発になり、スロースリップの地殻変動も確認されていた。

 どうやら5年程度の周期で群発地震が起こり、1週間から数カ月続いたこともあることから、今回もまだまだ予断を許さない状況なのだ。

 この相次ぐ地震で、3月2日~3日の週末には、千葉県内のスーパーマーケットで2リットルの水が完売となる事態が続出。SNS上でも〈買い占めが横行〉〈水が売り切れ多数〉と不安の声が書き込まれるなど、県民が非常事態のさなかにあるムードがヒシヒシと伝わってきた。

 また今月になって千葉県南東部に位置するいすみ市の海岸にある観光スポット「夫婦岩」も、大きな岩の特徴的なアーチ状になっていた部分が崩落したことが確認されたが、これも地震の影響と見られている。

「いつ何が起きてもおかしくない状況の中、県民の脳裏によぎるのが、1987年の『千葉県東方沖地震』です。M6.7の地震が発生し、勝浦市、銚子市、千葉市で震度5を観測。九十九里浜沿岸などで液状化現象による被害が拡大したこともあり、6万棟以上の家屋が被災。2名が亡くなりました」(全国紙記者)

 幸いにも県民の防災意識は否応なく高まっているようだが、備えあれば憂いなし。最悪の事態を想定しておいて損はないだろう。

(つづく)

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