コロナ禍での国境閉鎖から4年。今年に入りようやく閉鎖が解除となり、ロシアからの観光客の受け入れを再開した北朝鮮。現在、ロシアの旅行代理店が企画する4日間の「北朝鮮ツアー」には、「謎のベールに包まれた国を一度体験してみたい」という観光客の予約が後を絶たないとも言われるが、北朝鮮ウォッチャーはこう語る。
「平壌市内にある万寿台にある金日成・金正日銅像や、万景台学生少年宮殿などを巡り、その後、元山の馬息嶺スキー場などを訪問する日程で、旅行費用は1人当たり約750ドル(約11万円)。もちろん、全日程にロシア語を話すガイドと通訳者が同行する」
そんな中、今年に入り目立ち始めたのが、北朝鮮の観光地や名所などをSNS上で紹介する外国人女性インフルエンサーや、ユーチューバーの存在だ。
「北朝鮮の観光地などを中心に写真や動画を撮影してインスタグラムに投稿しているのは、ほとんどが女性で、最近、フォロワー数4万人を獲得して話題なのが、『zoediscoversnk』(北朝鮮を探険するゾイ)という西欧人女性です。彼女は自身を北朝鮮の観光地ガイドだとして、北朝鮮各地を回り、インスタグラムだけでなくTikTok、X(旧ツイッター)、Podcastなどに、すでに750本以上の写真や動画が投稿しています。コメントはすべて英語ですが、国籍は不明です。ただ、外国人の写真撮影が厳しく制限されている北朝鮮で、勝手に写真撮影や配信が出来るはずもないため、彼女の活動に政府による何らかの関与があることは間違いない。その証拠に写真や映像としてアップされている場所は、北朝鮮政府がアピールしたい、いわば明るい部分だけで、暗い部分は一切映されていません。結局は体のいいプロバガンダだとみて間違いないでしょうね」(前出のウォッチャー)
さらに、「昨年11月から北朝鮮に滞在している」、として自身の姿を撮った映像をユーチューブやTikTok、インスタグラムなどにアップしているロシア人女性「ビカ(Vika)」も、フォロワー数7万5000人を超えるインフルエンサーだ。彼女も前出のゾイ同様、馬息嶺スキー場で撮影した映像をアップ。スキーをしながら「スキーは生まれて初めて。英語で講習を受けました。朝鮮語を知らなくても、とても簡単に学べますよ」と微笑み、ホテルの客室も、「窓からスキーゲレンデの美しい風景を楽しむことができるし、とてもきれいで明るいですよ」と高評価を与えるなど、PRに余念がない。
「一部報道によれば、彼女はモスクワ出身の23歳で、広告広報学を専攻している女性なのだとか。彼女がどういういきさつで北朝鮮に長期滞在しているかはわかりませんが、北朝鮮で規制されているSNSを自由に使用しているわけですから、彼女もやはりゾイ同様、北朝鮮当局から支援を受けて活動していることは間違いない。ただ、SNS上には《素敵ですね!》《一度行ってみたい》といったコメントだけでなく、《明るい部分だけじゃなく、暗い部分もちゃんと見せなきゃ》《プロバガンダに利用されて恥ずかしくないの?》といった厳しいものもありますからね。とはいえ、北朝鮮としては今後も観光客を呼び込みたい。そうなると、外国人女性を使った英語での広報活動は継続していくことになるでしょうね」(同)
はたして、外国人女性らによる北朝鮮「観光地宣伝活動」の成果は…。
(灯倫太郎)