西川龍馬のオリックス入りにともなう「人的補償のウラ」が見えてきた。
1月5日、西川の旧在籍チーム・広島が高卒2年目を迎える日高暖己投手の獲得を発表した。
「広島が投手を人的補償で求めたのは意外でした。というのも、広島はこのオフ、投手の積極補強を進めており、野手の補強は外国人助っ人を除けばドラフト指名した高校生だけ。おそらく、オリックス側も野手を求められると見て『野手をガードする名簿』を作成したのでしょう」(球界関係者)
仮に、名簿を見て投手に切り替えたとしても、高卒2年目の1軍登板経験のない若手だったことは驚きだ。日高は同じ宮崎県出身で、投球フォームも似ていることから「山本由伸2世」と呼ばれていた。広島側はファーム戦で日高の将来性を認めていたとみられるが、人的補償に選んだ理由はそれだけではないという。
「日高の将来性は高校時代から、各球団の九州地区担当スカウトが認めていました。でも、指名しにくい状況にあったんです」(前出・関係者)
日高が本格的に投手の練習を始めたのは高校2年の秋から。3年夏には甲子園大会にも出場し、その県予選の決勝戦では140キロ台後半の剛球を連発し、わずか91球で完封勝利を収めている。当然、各球団のスカウト陣はざわついたが、ドラフト候補の調査は長い期間を掛けて行われるもの。なかには中学時代からマークされている選手もいて、「どの高校に進んで、どんな指導を受けているか」もチェックされる。
つまり、高校2年まで内野兼務だった日高はその時点までリストに入っていなかった。投手転向後にその才能が開花したため、“予定外の追加候補”となり、各球団は「まだ投手転向して1年も経っていないし」と、頭を悩ませていたそうだ。
「オリックスは優勝チームだから、日高を支配下で指名する余裕があったんです。日高の獲得に限ってはオリックスの勝利でした」(前出・関係者)
こうしたドラフト当時の舞台裏を聞くと、広島は西川の人的補償でリベンジを果たしたとも言えそうだ。
日高は将来のローテーション候補。しかし、今季すぐに戦力になるかといえば、そうならない可能性のほうが高い。
「プロテクトされていないオリックス選手のなかには、即戦力の投手もいたはず」(スポーツ紙記者)
本当に、日高が欲しかったのだろう。
(飯山満/スポーツライター)