1200年以上の歴史があり、国の選択無形民俗文化財にも指定されている岩手県奥州市の黒石寺で毎年2月の旧正月の時期に行われる「蘇民祭」。
1年でもっとも寒さの厳しい季節、ふんどし一丁の男たちが雪の積もる極寒の屋外で夜通し行う日本三大奇祭の1つとして有名だが、2024年2月17日の開催を最後に幕が下されることが明らかになった。最後の祭りも夜通し行うことはせずに午後11時までとし、2025年からは住職が祈祷を行うことで祭りの代わりとするという。
祭りを終了する理由について黒石寺の藤波大吾住職は公式ホームページで、「現在祭りの中心を担ってくださっている皆様の高齢化と、今後の担い手不足により、祭りを維持していくことが困難な状況となったためです」と説明している。
蘇民祭は氷点下の中、男たちが川で頭から水を浴び、火が放たれたやぐらの上に登るなど参加者にとっては過酷な祭りだ。最後は五穀豊穣と無病息災を祈願した護符の入りの蘇民袋を奪い合うという荒々しい内容で、その模様は毎年ニュースや新聞でも報じられる。若いころは参加していたという地元出身の60代男性は、「少子高齢化が進む地域なので若者の数も年々減少しており、地元からの参加者は以前から少なかった」と嘆く。
また、これだけの規模の祭りになると準備や運営などに対する地元住民の協力は不可欠。その人手を集めることにも苦労していたようだ。
「祭りには地元以外からも参加できるので、希望者は全国から集まっていましたが、準備や運営はあくまで地元住民の手によって行われます。でも、やはり高齢化により、人手不足はむしろ参加者以上に深刻でした。あくまで地域のお祭りのため、外部からボランティアスタッフを募集することに難色を示す関係者もおり、中止という判断に至ったようです」(取材経験のある週刊誌記者)
ちなみに奥州市といえば、先日ドジャースと契約を結んだ大谷翔平の出身地として知られる。中止の発表はともかく、蘇民祭の存在は当然知っているだろう。
「ネット上では大谷の来場を望むコメントも多数見かけますが、祭り当日はキャンプシーズンだけにさすがに無理でしょう。ただ、メッセージだけでもあれば最後の祭りに花を添えられるんですけどね」(前出・記者)
1200年以上続いた伝統ある祭りが終わってしまう。これもやはり時代の流れというものなのか…。