「同情するなら金をくれ!」
こんな名ゼリフで社会現象を巻き起こし、高視聴率を叩き出した平成ドラマのヒロインたち。名女優の功績を振り返ってみよう。
「今のようにYouTubeが盛り上がる前、娯楽のメインストリームはテレビ。そういう意味で、平成はテレビがまだ元気だった時代と言えるでしょう」
こう話すのは芸能評論家の三杉武氏。平成3年(91年)、鈴木保奈美(57)主演の「東京ラブストーリー」(フジテレビ系)が放送された時間帯は「街からOLが消えた」と言われたものだ。
平成ドラマを視聴率でひもとくと、トップは13年放送の「半沢直樹」(TBS系)で、最高視聴率は42.2%。主演の堺雅人(50)にはアッパレを献上したいが、同い年の松嶋菜々子(50)も負けていない。11年放送の「家政婦のミタ」(日本テレビ系)では40%をマーク。00年の「やまとなでしこ」(フジ系)でも34.2%の大記録を打ち立てている。前出・三杉氏は「平成の視聴率女王」をこう評する。
「キャンペーンガールの水着グラビアから、とんねるずのバラエティーで〝汚れ役〟も受けた苦労人。そこからNHK朝ドラ『ひまわり』のヒロイン、『きれいなおねえさん』のCMを経て月9『やまとなでしこ』で大ブレイク。翌年に反町隆史(49)と結婚し、平成のシンデレラストーリーを体現したのです」
ヒロインが輝きを放った平成の高視聴率ドラマの中でも、特筆すべきは2作品でベスト10入りした賀来千香子(62)だ。
「92年の『ずっとあなたが好きだった』(TBS系)でブレイクするまではお嬢様キャラで、3番手4番手の役どころが多かったのですが、冬彦役・佐野史郎(68)の怪演もあって、サスペンス女優として認知されました」(前出・三杉氏)
一方、平成の昼ドラマを盛り上げてくれたのが〝みっちょん〟こと芳本美代子(54)。85年にアイドル歌手としてデビューした芳本にとって、契機となったのは、ミュージカル「阿国」(90年)への出演だった。芳本が振り返る。
「デビュー6年目での新しい試みでした。最初は本当に迷ってばかりで、『稽古に行きたくない』とか駄々をこねたりして‥‥。でも、木の実ナナさんや池畑慎之介さん、上條恒彦さんといった大先輩が手取り足取り教えてくださって、ひとつの作品を一緒に作り上げていく喜びを知り、お芝居の世界にハマっていったんです」
平日13時スタートの帯ドラマ「愛の劇場」(TBS系)では、「ひよこたちの天使」(96年)、「ママまっしぐら!」(00年)など多くの作品で主演を務め、〝昼ドラの女王〟と呼ぶにふさわしい活躍を見せた。
「昼ドラは体力勝負。朝8時に入って、夜中の2時に終わることもザラでした。収録は順撮りではなく、場面ごとにまとめて撮っていたのを覚えています。例えばリビングのシーンなら、6話の『シーン12』を撮って、それから9話の『シーン25』に飛ぶような具合で‥‥。だから、常に頭の中で全体の流れや前後のつながりを考えながら演技をしていました」
こうした経験を買われて、芳本はこの4月から大阪芸術大学短期大学部の教授に就任。メディア・芸術学科舞台芸術コースで演技の基礎を教えている。
「セリフをただ言うのではなく、そこに至る感情の動きや背景、映像や舞台上では見えない部分もしっかり考えて、役柄を自分のものにすることの大切さは伝えています。私事ですが、来年はデビュー40年目という節目の年。歌い手としても新たなチャレンジの年にしたいと思っています。そうそう、YouTubeではプラモデルを作ったり、体を張った企画もお届けしているので、ぜひご覧になってください」