消費減税はしない。これが自民党幹部の共通認識のようだ。政権発足から2年経った10月4日の会見で、岸田文雄総理は「税制、給付、社会保障における様々な軽減措置、インフラ投資、その他あらゆる手法を動員して思い切った対策にしたい」と珍しく“減税”に言及していたが…。
9月の内閣改造で自民党幹事長代理に就任した稲田朋美衆院議員は、10月8日放送のフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」に出演し、消費減税を「時代に逆行」と切り捨てた。
大阪府知事を務めた橋下徹氏は、「国民への還元」について、「一律減税などをやって富裕層に恩恵を与えることではなく、物価高で困っている人にきちっと手当をするとか」と述べて、「教育の無償化」、「生活必需品である食料品の消費税をゼロに」と提案した。
稲田氏は「物価安定目標」である2%がまだ達成されていないとして、「私はやっぱり本来のあるべき姿、ここからデフレを脱却するっていうのは、物価プラスアルファの賃金をしっかり上げていって、企業も設備投資をしていって…という時に、消費税を下げて、見かけの物価を下げていくっていうのは時代に逆行している」と消費減税を否定。さらに「消費税だって、高額所得者に有利だし、高額なものを買う人に恩恵が大きいので」と続けた。
すかさず橋下氏は「だから食品だけの部分(消費税)を下げる。一般的に消費税を下げるんじゃなくて。一般的に消費税を下げることがおかしいのであれば、一般的に所得税を下げることもおかしいと思うので、困っている人にしっかりと手当をするという方針で貫いてほしい」と主張した。稲田氏は「まったくその通り。その目的でもって、物価高対策、低所得者対策、インフレを招くのではなく、今の物価高で消費ができないところにしっかりと目を向けた対策」と訴えた。
「消費税を下げることは時代に逆行しているとの稲田氏の発言はネット上でも物議をかもしました。消費税は低所得者ほど負担率が高いと言われています。なぜならほとんど貯蓄もできず、収入の8割以上で食料品などを購入して生活している世帯は必然的に生活費に占める消費税の割合が高くなります。一方、富裕層は収入のごく一部しか消費に回さないので、負担率は軽くなる。橋下氏はせめて食料品だけでも消費減税すべきと訴えたのですが、稲田氏はそれを一律減税と取り違えていた様子。ネット上でも《話がぜんぜんかみ合ってない》《稲田さん税制の基本もわかってない?》《無知すぎる》といった反応が寄せられていました。消費減税の必要性についてはかたくなに否定する“減税アレルギー”とも言えます。そんな稲田氏がこの9月から幹事長代理という要職に就いているだけに、岸田政権下で消費減税の可能性は限りなくゼロに近いでしょう」(政治ジャーナリスト)
庶民にしてみれば、せめて食料品だけはさらなる軽減税率にしてほしいところだが、期待はできないようだ。