「VIVANT」“別班”の正体とは!? 途轍もない日本の秘密組織(1)自殺に見せかけて抹殺

 テロ組織の協力者であれば、元同僚であろうとも容赦なく殺す─。日曜劇場「VIVANT」で描かれた自衛隊の秘密組織「別班」は実在するのか。また、影の軍隊と渡り合う「スパイ組織」の実力とは? そしてスパイ天国・日本の危機とは? ドラマでは描かれない諜報戦の内幕をお届けする!

「ドラマには脚本の段階から携わってきましたが、最初に福澤克雄監督が書かれた脚本を見て、そのリアリティに驚かされました。私以外にも外事警察の現場を知る〝協力者〟がいるのではないか。そう思って尋ねたら『お前だけだよ』と(笑)。ブレインストーミングで私が出したアイデアや体験、公安情報を作品の随所にちりばめる構成力もさることながら、情報収集能力の高さには敬服するばかりでした」

 こう話すのは大ヒットドラマ「VIVANT」(TBS系)で公安監修を務めた元警視庁公安部外事課の勝丸円覚氏。作品でリアルに描かれたのは、国際テロ組織に立ち向かう日本の秘密組織「別班」だ。メンバーは民間の商社や省庁に籍を置きながら、時には犯罪組織の協力者を自殺に見せかけて抹殺するなど、「影の部隊」として非合法な任務をこなしていたが‥‥。勝丸氏がその正体を明かす。

「ルーツは大日本帝国陸軍の陸軍中野学校。出身者は戦時中に敵国で偽札を流通させたり、毒薬を撒いたりする訓練を受けたと言われています。そこで教官を務めたのが藤原岩市という人物。彼は自衛隊創設時には情報部門の育成に携わりました。つまり、陸軍中野学校の卒業生によって作り上げられた組織が、『別班』として秘密裏に活動を続けてきたと理解しています」

 国際ジャーナリストの山田敏弘氏も、防衛省情報本部の前身にあたる陸上幕僚監部の第2部に、「別班」とも「別室」とも呼ばれる組織が存在したとしてこう話す。

「そこでは電波情報の収集や解析、時には盗聴まで行っていたと言われています。73年には、後に韓国の大統領となる金大中氏が来日中に拉致されるという事件が発生。78年に共産党の機関紙『赤旗』が、この事件に別班が関与していたという書籍を出版すると、その存在に注目が集まりました」

 海外要人の拉致にまで関与していたとは驚きだが、

「昭和から平成、令和という流れの中で、情報収集に特化した組織に変貌していったというのが私の見立てです」(勝丸氏)

 ドラマは9月17日放送の最終話で大団円を迎えたが、勝丸氏が驚きのエピソードを明かす。

「ドラマがスタートして、『自衛隊の別班にいた』という人物からコンタクトがありました。実際にお会いしたら、かつて防衛省の情報本部に勤務していたとのことで、私が警察時代に得た防衛省の人事情報もしっかり把握していました。彼の発言に嘘はなく、見た目は優秀なビジネスマン。別班という言葉を用いるかどうかは別として、別班のような仕事をしている人はいるということです」

 平和ボケした水面下では現実に諜報戦が繰り広げられているというのだ。

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