統一地方選の4人に1人は無投票当選…地方議員は「オイシイ仕事」か否か

 統一地方選挙が始まった。4月9日投票日の前半戦は道府県知事と政令指定都市の首長と議員で、4月23日投票日の後半戦が市区町村の首長と議員の選挙となる。

 選挙戦が始まるといつも報じられるのが、地方議員のなり手不足だ。3月31日告示の道府県議では、定数2260のうち4分の1は対立候補がいないため、投票を待たずして当選が決まったという。手を上げさえしたら即、当選というわけだ。

「無投票当選は00年代に10%台だったものが、次第に多くなって、最近は4分の1にまで増えています。大きな理由は、政治家は選挙に落ちたらタダの人でしかなくなるから。一方で選挙はカネがかかるものなので、安定しない上にリスクが高いということです」(全国紙記者)

 一方で、議員は「ブルーオーシャン」「おいしい仕事」と言う人もいる。「おいしい地方議員 ローカルから日本を変える」の著書がある伊藤大輔氏だ。長くブラジルのスラム街で暮らし、世界中の危険地帯などを訪ねるテレビ番組「クレイジージャーニー」(TBS系)に出演したこともある写真家だ。伊藤氏は19年に神奈川県秦野市の市議選に、準備1カ月、自腹費用12万円で立候補し当選。現在、同市の市議を務めている。

 伊藤氏が言うには、秦野市の場合は年俸762万円で労働日数38日、しかも兼業OKで時間拘束が極めて少ない。だから「おいしい仕事」なのだとか。だから写真家の仕事も続けることが出来ていて、今の時代に合った仕事なのだという。と聞けば、「確かに」とも思える。

 だが、NHKが19年に行った現役議員2万人アンケートでは、7割近くが生まれ変わったら議員になりたくないと答えている。自由記述欄には「議員報酬から諸々支払ったら手取りは10万円ほど」や、議員の妻はいつも頭を低くしなければならないため「選挙に出るとき妻に土下座した」というものがあったり、「議員に相応しくない同僚議員がいる」と7割の人が答えるなど、なるほど仕事として忌避されがちなイヤ〜な現実があるようだ。

 ただ、「議員は長く続けたくない」との問いに「とてもそう思う」が11.1%に対し、「ある程度そう思う」が43.7%、「あまりそう思わない」「全くそう思わない」が41.5%という結果なので、世間一般の職業意識と比べると、そんなに悪いものじゃないようにも思える。
 
「密度の高い地縁の中で、政治家を本職としている場合などは、冠婚葬祭や地域のイベントにこまめに顔を出すなど、休日や財布の中身返上で活動せざるを得ないため大変ということでしょう。ですがほとんどの地方議員は本職の傍らに議員をやっているのが現状。だから伊藤氏が言うように、別の仕事を持ちながら、若い力で地方を変えていくという観点に立てば、トライする意味は十分にあると思います」(同)

 地方創生が言われ、移住がブームの今、伊藤氏のような考え方が広まれば、地方も徐々に変わっていくかもしれない。

(猫間滋)

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