小説では、銃撃犯は即座に現行犯で逮捕されたものの、その後も主犯であるかどうか違和感を残したまま物語は展開することになる。そして、物語後半に事件に関わる「第3の男」の存在が明らかになる‥‥。
社会部記者も単独犯説をいぶかしがる。
「事件から8カ月経過した今でも、安倍元総理銃撃事件は不明な点が多い。左後ろに振り向きざまのところを撃たれながらも反対の右側に弾創があること、右上腕部で見つかった弾丸の他にもう1つの弾丸が跡形もなく消えたことなど、説明できない多くの謎を残している。なにより、奈良県警の警護が手薄とはいえ、素人1人であれほどの劇場型テロを遂行できたことはおよそ信じがたい」
そのために、いまだにこの事件には「ビル上にスナイパーがいた」「背後でCIAエージェントが関与」などの陰謀論が囁かれているほどなのだ。
「実際の事件でも第3の男はいたのか? そこは核心部分なのであえて触れませんが、例えば宗教団体に入信した人は、自分から入ったと主張します。実際には、入信を進めた勧誘者がいるはずなんです。つまり、いくら本人が自分で罪を犯したと自供しても、実際にはその背後で洗脳し、事件を教唆した人物がいる可能性はあるわけです。小説では、そうした一部マスコミで確認された事実を元にしています」(本郷氏)
果たして、山上徹也被告(42)に黒幕がいたのか‥‥。
「母親が旧統一教会に入信したことにより一家が崩壊、山上被告が教団関連団体にビデオメッセージを送った安倍総理を襲ったというのが犯行動機になった。悲惨な境遇により凶行に及んだ被告に同情し、拘置所に差し入れする人まで出た」(社会部記者)
こうした旧統一教会一辺倒の世論に危機感を感じたことも執筆の一因だという。本郷氏はこう訴える。
「事件の筋書きはあまりにもよくできすぎている。そもそも旧統一教会に恨みを持つ人間が総理を狙うとは考えにくい。韓国にいる韓鶴子代表を狙うのが難しいなら、なぜ日本の代表を狙わなかったのか。例えば、ヤクザに恨みを持つ人が、放置したことで警察庁長官を殺害することはない。そうしたことをもう一度考える契機になることを願ってこの本を書いたのです」
2月13日、山上被告は、殺人罪のほか、武器等製造法違反など5つの容疑で追送検され、裁判を待つ身だ。
「山上は昨年7月から今年1月まで異例となる5カ月超の鑑定留置で精神鑑定が行われた。そこには政治的判断で裁判を遅らせる目的があったことは否めない。公判で山上被告が好き勝手に爆弾発言すればせっかく一段落した旧統一教会と政治の関係が再びクローズアップされる恐れがある。この先、統一地方選、広島G7サミットなど政治日程が予定され、裁判は当面先延ばしになる見込みです」(社会部記者)
公式発表のみを「真実」と鵜呑みにするには、あまりに不可解な点が多すぎる‥‥。
*週刊アサヒ芸能3月30日号掲載