日本人メジャーリーガーも加わって「史上最強」との呼び声が高いWBC日本代表の「侍ジャパン」。その期待を裏切ることなくプ−ルBの東京ラウンドでは、宿敵・韓国も圧倒して堂々の4連勝で首位通過を果たした。地元開催とあって日本中は大盛り上がり、10日の韓国戦では世帯平均視聴率で44.3%(TBS)を記録、その後も佐々木朗希が先発したチェコ戦でも43.1%(テレ朝)を記録するなど全4試合が40%を超えるという、視聴率でも快挙を成し遂げた。
これだけテレビが賑わうのも久方ぶりのことだが、そこで注目されるのが「試合観戦の多様化」だ。というのも、昨年11〜12月に開催されたサッカーW杯では、巨額な放映権料に日本のテレビ局は及び腰で、代わりに大枚をはたいて「全試合配信」という賭けに出たABEMAが大成功。メディアでのスポーツ観戦の在り方を大きく変えたからだ。
そして今回のWBCはどうかというと…。
「WBCでも、動画配信のアマゾンプライムが全試合配信して注目を浴びました。テレビではCSのJSPORTSも全試合放送で、地上波ではTBSとテレ朝が予選の日本戦、もしくは侍ジャパンが勝ち上がるであろうトーナメント半分ずつを担当しています」(スポーツライター)
先のサッカーW杯では、ABEMAが解説に本田圭佑を起用し、会ったことのない選手を「さん」付けで呼んだり、自由奔放な発言が面白いと話題になった。ただ「試合映像を流す」だけではなく、視聴者が「どう見るか」もしくは「どう見せる」かでメディア側も工夫を凝らすようになっている。
「アマゾンプライムでは実況に、長年ラジオで野球実況を行ってきた斉藤一美アナを起用しましたが、映像がないところで多くを語るラジオ実況に違和感をおぼえるとして、当初は否定的な意見がありました。また、MCにEXITの兼近大樹を起用したことにも賛否両論ありましたね」(同)
TBSは画面左上に野球用語解説をテロップで入れて、にわかファンにも分かりやすいと好評。「守備の職人」源田壮亮(西武ライオンズ)が華麗な守備を見せたときにファンが漏らす「源田たまらん」のワードが、「SNSでファンがつぶやく言葉」などと解説され「こんなのまで説明してる」と盛り上がっていた。
またスポーツのビッグイベントの度に、ユーチューブで実況チャンネルが乱立するのは毎度のことだが、この「見ながら配信」でスポーツ総合サイトの「スポーツナビ」は谷繁元信氏や鳥谷敬氏ら有名プロ野球OBを現場に呼び、「ニコニコ生放送」では元プロ野球選手に加えて、渡部建やアイドルグループ「Merci Merci」のメンバーで、ラーズ・ヌートバー選手の親戚・内田ゆめを投入して見せ方に工夫を凝らした。
中継する媒体が多様化するのと同時に、今後はメディア側も「見せ方」の工夫で競争が熾烈になるだろう。
(猫間滋)