「年末年始の冬休みを利用して家族や友人からしっかりと契約を取ってくるようにしてもらいたい」
暮れも押し迫った12月26日、週刊経済誌「ダイヤモンド」は楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史氏が12月20日に行った楽天モバイルの「朝会」でのこんな言葉を紹介した。同誌が組んだ渾身の特集「楽天 解体の序章」の第1弾の記事だ。
赤字額は徐々に減ってはいるものの、それでも巨額の赤字が止まらない楽天モバイルの社員に対し、冬休みの間に家族や友人から5回線の契約を取ってくる〝ノルマ〟を課したというのだ。記事によれば、22年1月段階での同社社員は約4600人なので、ノルマが達成されれば2万3000件の契約が積み上がることになるという。
「2870億円の赤字。楽天グループが11月11日に発表した、22年1〜9月期の連結決算の数字です。もちろん理由は楽天モバイルの先行投資によるもの。これだけの巨額赤字だと、確かに何らかの大ナタを振るわない限りそうそうは解消されないでしょう。だとしても家族や友人を巻き込むノルマはいかがなものでしょう。もはや『営業』というより『勧誘』とでもいうような、どこかマイナスの言葉が似合いそうな気がするのですが」(経済ジャーナリスト)
ちょっと聞いただけでも三木谷氏が抱える危機感の深刻さが伝わり、なりふり構わない様子が窺えるが、すると年明け早々の1月6日には社債を発行することが報じられた。中身は期間2年間の年利2〜4%の個人向け社債だという。償還日は25年2月10日で、規模は2500億円。愛称は「楽天モバイル債」で、楽天Gが発行する個人向け社債としては過去最大額だという。
するとネットやSNSでは買いか否かについてで話が盛り上がったのだが、「2年なら耐えるでしょ。耐えるよね?」と楽天モバイルの2年先のことを危ぶむ声が上がれば、緊急事態に瀕しての「戦時社債」などと揶揄する声も上がってしまうのだった。
楽天モバイルは23年中の黒字化を目標としているので、今年は会社の存亡を賭けた重要な1年となる。明るい材料としては、基地局の整備を前倒しして整備コストを抑えることができたこと。そしてエリアの拡大はKDDIに支払うローミング費用の削減にもつながる。
「そのための費用捻出として、楽天Gでは楽天証券の約20%の株式をみずほ証券に売却したり、23年には楽天銀行と証券の上場を予定しています。社債も22年には『楽天モバイル債』と『楽天カードマン債』の2本を起債。まさにグループの体を切り売りしつつ、集められるものは全部集めているといったところでしょうか」(同)
ただ資金面での算段がついたとしても、昨年廃止した「月額0円」の影響が今後どう出るかは未知数。0円廃止では大量のユーザーが離れたが、残ったユーザーを強固なものにしつつ、どれだけ上増しすることができるか。
同社では契約数で1200万件の目標を掲げている。その根拠は、人口カバー率95%超の東京23区の契約率が9.4%なので、今後、地方の人口カバー率が上がり全国の9.4%の人が申し込めば1200万件になる、というざっくりとしたもの。絵に描いた餅にならなければ良いのだが。
(猫間滋)